え?そんなことはない?幾つになっても男はオンナにモテなきゃだめだって??
そうか。ならバイクでも買うかな。まあ、そんなような話さ。
オートバイ2017年9月号別冊付録(第83巻第14号)「actinidia polygama」(東本昌平先生作)より
©東本昌平先生・モーターマガジン社 / デジタル編集:楠雅彦@ロレンス編集部
40歳の記念?にバイクを買ったとたんに変化が訪れて??
人生は長いようで短い。
まだまだ若い、と思っていたはずが、気がつけば私ももう40歳だ。
30代の頃は、そのうち結婚でもしないとな、と思ったりもしていたはずが、時間はあっという間にすぎ、結局未だに独身のままだ。もちろん独身貴族を気取るつもりであったわけでもなく、ただ流されているかのような自分に、多少の焦りがあったのだろう。なぜか、私はバイクを買った。
するとどうだ。
私の環境は劇的に変化したのだった。
バイクはまるで”またたび”だ・・女を狂わせる媚薬だった
どんな変化が訪れたのかって??
そいつを聞いたら、あんたたちは羨望のあまり、身悶えするだろうさ。
そう、私は急に女たちから追いかけられるようになったのだ。
海に行けば胸元がこぼれんばかりの際どいビキニの若い子たちが「そのバイクに乗せてくれ」と精一杯の媚を売ってくるし、うどん屋に寄れば「表のバイクあんたのだろ?」とおばちゃんが声をかけてくる。
店を出れば女子高生たちがたむろして待ち構えてるという具合さ。
想像できるかい?
actinidia polygama。つまり、またたびのことだが、このバイクはまるで女を酔わせ、引き寄せるまたたび だった。
一体全体、こいつはどういうわけだ?
私は思ってもみなかった変化に動揺し、途方に暮れた。バイクに乗ればモテるかもしれない、そんな考えは微塵もなかった。ただ40歳になって、何か自発的に生活を変えてみよう、そうちょいと思っただけだった、それなのに・・・。
私はバイクを傍に停めて、波の音を聴きながら、どうしたものかと考えあぐねた。
そうかい、じゃあ、行くとこまでいってやろうじゃないか。GS1200SS、相棒と一緒に
それからしばらくして、私は学生時代からの腐れ縁の友人から連絡を受けて、真夏の海へと向かった。彼は早くから起業して成功していた。
若いおネエちゃんを乗せた派手な真っ赤なフェラーリが自慢で、何かとブイブイ言わせていた奴だが、最近その彼女とご無沙汰だという。要は逃げられったってことだろう。
「バーカ、ちげーよ」と奴はいう。「オメーこそ、ちったあモテたかい?」
私はその言葉にニッと笑って答えた「わんさかよ」
その言葉に呼応するかのように、水着姿の女の子たちがこぞって私を囲んだ。早く行こうとばかりに私の腕を掴む彼女たちの姿に、奴は仰天したかのように「嘘だろ!」叫んだ。
嘘じゃない。私は女の子たちの肩を抱き寄せながら海辺へと向かった。
振り返ると、奴は信じられない・・・という表情で突っ立っている。俺もバイクにするかナ・・・奴の心の声が聞こえたようだった笑。
夢のような話だって??笑。ひどい妄想野郎だって??爆笑。
まあ、いいじゃないか。
こちとら、相棒にまたがりゃそれで絶好調なのさ。
信じる者は救われる、それでいいじゃないか。なっ。