あらすじ
主人公の海賊キャプテン・ジャック・スパロウ。船はなく、なぜか陸で銀行強盗を企てるも失敗し、手下たちから愛想を尽かされてしまう。ライバルであるバルボッサが船を10隻も持つ大海賊として出世しているのとは大違いな体たらく。
誰もが見放して去っていく・・・。ところが。そのジャックに近づいてきた一人の若い男がいた。彼の名はヘンリー・ターナー。第1作から登場するメインキャラクターであるウィル・ターナー(オーランド・ブルーム)の息子だった。
ウィルは第3作「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」で、フライング・ダッチマンという幽霊船の船長となっており、10年に一度しか陸に上がれないという呪いを受けている。ヘンリーは父の呪いを解くため、海の呪いを全て凌駕するという万能の道具”ポセイドンの槍”を探すため、歴戦の海賊であるジャック・スパロウの助力を得ようとしていたのである。
さらに、”ポセイドンの槍”のありかを記した暗号を解く、重要なヒントが隠されたガリレオ・ガリレイの日記を持つ天文学者の女性カリーナが加わり、ジャックに冒険の手伝いをするように迫る。
最初は気が進まないジャックだったが、かつて“魔の三角海域”に追い込み、沈没させたはずのスペインの海賊処刑人サラザールたちが亡霊となって自分を追っており、彼らを倒すためには”ポセイドンの槍”が必要であることを知ると、ヘンリーとカリーナを連れて、海に出ることを決心するのであった。
原点回帰したシンプルでパワフルなエンターテインメント
本作は第1作「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」にかなり近い構成で、原点回帰をした作品だと言える。
ヘンリーとカリーナの美しい青年と美女ぶりは、準主役とも言えるウィル・ターナー(オーランド・ブルーム)とその恋人エリザベス・スワン(キーラ・ナイトレイ)を思い起こさせるし、永遠の呪いに不死者となりつつも復讐心に突き動かされてジャックを探すサラザールたちは 第1作で同じく呪いをかけられた死者として登場するバルボッサたちの姿を彷彿させる。
本作は、ジャックたち、サラザール、そして漁夫の利を得ようとするバルボッサの三つ巴の戦いに終始する。これまでの作品同様に英国海軍も”ポセイドンの槍”争奪戦にしゃしゃり出てくるものの、サラザールによってあっさりと退場させられるので、そのシンプルな筋書きは守られて、注意力を散漫にさせられることもない。
美しい海で、見事な造形美の帆船たちが激突し、海賊たちの激しい乱闘が繰り広げられるのも、これまでの作品の流れであると同時に、初期の作品が持つ勢いとわかりやすさが保たれている。
また、父を呪いから救うために奮闘するヘンリーと、生き別れの父が遺した謎を解くことを自分の人生の目的とするカリーナは、やがて恋に落ちるが、それも当然と思えるように巧みに生き方を重ねられている。
惜しむらくは、ジャック・スパロウが反射的な動きに終始して、ヒーローとしての活躍をあまりしていないところ。
逆に特筆すべき見所としては、バルボッサが今回も非常に重要で美味しい役回りを与えられているところで、もっとも海賊らしくイカした男として輝きを放っていることだろう。