女たちの三者三様の秘められた苦しみの鍵になっているのは・・「ガール・オン・ザ・トレイン」-1/100の映画評

あらすじ

ヒロインのレイチェル（エミリー・ブラント）はアル中で夫も仕事も失い、友人の家に2年も居候したまま、いまだに酒浸りの状態だ。毎朝NYへ向かう電車に乗っては、自分を追い出した夫と新しい妻子が暮らす家を眺めている。

さらにその元夫の家から少し離れたところにある家に住む、仲睦まじいヒップウェル夫婦に、かつての自分と夫の姿を重ねつつ、彼らを理想のカップルとして憧憬と郷愁の思いを持って眺めるだけの日々を繰り返していた。

レイチェルがアルコール中毒になったのは、元夫との間になかなか子供ができないことに対する重度なストレスのためだった。だからヒップウェル夫妻のように子供がおらず、夫婦ふたりで仲良く暮らしている様子を理想の夫婦のそれと感じていたのだ。逆に、元夫のトムとその妻アナ（レベッカ・ファーガソン。『ミッション：インポッシブル ローグ・ネイション 』で女スパイを演じて話題になった）は健やかな赤ん坊を授かっており、その姿を見ることは堪え難いストレスのタネになっていたのであった。

そんな折、レイチェルはヒップウェル家のバルコニーで、妻 メガンが見知らぬ男と抱擁している様子を目撃してしまう。電車の中から見る二人は、明らかに熱くキスを交わしているように見えた。
自分の勝手な理想を裏切られたレイチェルは、大酒を飲み、メガンを問い詰めようと、その夜彼女の家に向かうが、記憶をなくし、なぜか血だらけのまま自宅で翌朝目覚める。
そして、その日を境に、メガンは行方不明になるのであった。

結婚や出産を女性の義務とする常識に追い詰められていく三人の女性の憂鬱

「ガール・オン・ザ・トレイン」では、女性が子供を産まなければならない、という”常識”によって苦しむ三人の女性たちが描かれているのが特徴だ。

ヒロインのレイチェルは不妊のストレスでアルコール中毒になるし、失踪するメガンは夫には言えない過去のPSTDから子供は欲しくないのだが、夫のスコットから子供欲しさのセックスを強要されることにストレスを感じている。さらにレイチェルから男を奪った形になったアナは、夫との間に子供を授かっていながら、夫との性生活がうまくいかなくなり、やはりストレスを抱えている。

ヒロインのレイチェルは電車の中から、つまり家の外からぼんやりと家族を覗き、勝手な妄想で理想を描いたり嫉妬したりしているが、実際は家庭の真実は外からは見ただけでは何もわからない、ということだ。

結婚をしなければならない、妊娠をしなければならない、といった社会からの無邪気な圧力を多くの女性たちは受けていると思うが（いい歳をして結婚していない男も同じようなプレッシャーを受けてはいるだろうが）、そうしたことが実は強いハラスメントになっている、ということを我々は知らなければならない。

セクシーでクールなメガン役のヘイリー・ベネットに注目

関係ないが僕はクールでセクシーな女性に弱い。今回メガン役を演じるヘイリー・ベネットは1987年1月7日生まれ。スッキリとした涼しげな目元と、しなやかな肢体。「マグニフィセント・セブン」でも重要な役を演じており、今注目の女優だ。
少しジェニファー・ローレンスにも似ているが、セクシー度とクール度では上をいっている。（S度ではジェニファーが上かもしれないが）

ぜひ、彼女の今後の出演作に期待してもらいたい。