"コカ·コーラ"鈴鹿8耐の歴史のなかで、多くの人々の記憶のなかに残るマシンたちを紹介する連載です。今回はオールドファンには懐かしいであろう革新的モデル、エルフeです!

あの本田宗一郎も興味しんしん !?

1978年から1988年までの約10年間、フランスのオイル・ブランドの「エルフ」が開発したモト・エルフは、当時ロードレーシング界で大いに話題になったプロジェクトです。大手石油会社であるエルフのバックアップにより、アンドレ・ド・コルタンツのアイデアを元に生み出されたELF Xを皮切りに、世界耐久選手権、世界ロードレースGPなどの実戦の場での磨き上げられたモト・エルフは、新しいモーターサイクルのシャシーデザインの可能性を世に示し、多くの反響を呼び起こしました。

今回紹介するエルフeは、エルフのエンデュランス(耐久)版を意味するネーミングが与えられています。初期のエルフxはヤマハTZ750のエンジンを使用していましたが、ホンダとの協力関係が築かれてからだったので、エルフeはホンダRS1000エンジンを採用しています。

鬼才アンドレ・ド・コルタンツ期のエルフ・モトは、フレームレス構造がその特徴でした。前後片持ちサスペンションの前側は、4輪車のダブルウィッシュボーンの車輪の向きを90度ひねったようなセンターハブ・ステアリング構造。後側はのちにホンダのプロアーム肩持ちスイングアームに発展することになります。 オートバイ/モーターマガジン社

1983年大会、ピットロードからスタートするエルフe。手前のメカニックはMotoGPチーム「テック3」共同創設者のひとりで、ロードレースGP業界の有名人であるギー・クーロンその人です。 オートバイ/モーターマガジン社

エルフeにまたがり笑顔を見せるホンダ創業者の本田宗一郎。その後ろには、1960年代ロードレースGP活動期に監督をつとめた秋鹿方彦の姿も見えます。 オートバイ/モーターマガジン社

鈴鹿を激走するエルフe。ライダーはクリスチャン・ル・リアールです。 オートバイ/モーターマガジン社

エンジンはホンダRS1000(空冷4気筒DOHC4バルブ)を採用。潤滑方式はドライサンプです。燃料タンクは車体底部というユニークな位置にあります。 オートバイ/モーターマガジン社

クリスチャン・ル・リアール/デビッド・アルダナ組に託されたエルフeですが、予選ではホンダファクトリーの3台のRS850Rに次ぐ9位。そして決勝はメカニカルトラブルで32周リタイア・・・という結果に終わりました。

翌年からTT-F1規定が1,000cc上限から750ccに引き下げられることもあり、エルフeは耐久レーサーとしての役目を終えることになりました。しかし、エルフeをベースに開発された速度記録挑戦、エルフRは、1986年にイタリア・ナルドサーキッ トで6つの分野の世界速度記録の更新に成功しています。

4輪レーシングの世界で活躍したデ・コルタンツが、4輪レーシングマシンの発想で作った2輪ロードレーサー・・・といえる初期のエルフ・モトですが、実戦では目立った成績をあげることが残念ながらできませんでした。ただ、そのインパクトは強烈で、多くのモータースポーツファンの間で今も語り草になっています。