前衛芸術家の両親に育てられたアニーとバクスターの姉弟。大人になり親元を離れてアニーは女優に、バクスターは小説家になっていたが、ある事件をきっかけに家族が再集結してーー。
個性の強い親から受けた精神的呪縛に悩む姉弟の、苦悩と不安を描いた作品。

理解しがたい”芸術”に生涯を賭けて殉ずる両親の精神的束縛に悩む姉弟の話

アニーは落ち目の女優、バクスターはスランプに悩む小説家。街中で奇行を行い、周囲の人たちの反応を撮影するという前衛芸術家の両親から経済的には自立したものの、彼らの強烈な個性の影響は色濃く残り、精神的には相変わらず支配されていた。
二人は幼少時から創作活動の一員”子供Aと子供B”として手伝わされ続けたが、久しぶりに会っても父親からはAとBと呼ばれることに苛立ちを隠しきれない。そのことに反発しつつも、姉弟は両親を拒否することができずにいるのである。

そんなとき、車で旅行に出かけたはずの両親が行方不明になる。残された車には大量の血痕が残り、その血液からは父親のDNAが検出された。
車が発見された付近では、数件の同様の行方不明事件が発生しており、その被害者の多くは死亡していると想定されていた。

バクスターは両親の死を覚悟するが、アニーは受け入れない。これもまた彼らのパフォーマンスの一つであると確信し、嫌がるバクスターを連れて 両親の捜索を始めるのである。

親の呪縛から逃れる姉弟の自立

本作は、前衛芸術家、しかも家族全員でさまざまな行為を行なっては撮影するという”ライブパフォーマンス”にのみこだわる、アーティストと変人の境目(どちらかというと奇行が目立つ変な人に思えるが・・・)にいる両親に育てられた子供たちが、長じて親元を離れてもその影響から逃れられずに苦しむ様を描いている。

落ち目の女優である アニーは、撮影中ヌードを迫られる無茶振りに対して半分キレて応じたり、スランプ中の小説家であるバクスターも、ジャガイモを発射するポテト大砲を使ったウィリアム・テルばりの射的のマトに自ら志願し、大怪我をするなど、ある意味追い詰められると”パフォーマンス”をしてしまうあたり、強く親の影響を感じさせる。

このように、本作は全体的に シリアスでありながら、やや滑稽な雰囲気の中で話は進む。そして、その滑稽で不可思議なムードの中で、両親の不吉な失踪という笑えない事態を迎えるのだが、アニー同様に観ている我々も、果たして我々も”芸術家”たちのパフォーマンスに騙されているのか、それとも本当に不幸な事件に巻き込まれてしまったのか、訳がわからなくなって、モヤモヤするのだw。

本作では突拍子も無い親に育てられたストレスとトラウマに苦しみながらも、両親を愛している子供たちの矛盾する心持ちを描いているが、最終的に二人は乳離れを果たしていく。精神的な呪縛から解き放たれて、真の大人として自立していくのである。
この作品では、両親の奇行はあるにせよ虐待とかそういうものではないのが救いだが、仮にそうした不幸な家庭に育った子供たちの自立の物語とみても成立する。いや、むしろ、幼少時のトラウマから逃れて、前向きに生きていく決意を固める子供たちの話として観るのが正しいと思うのである。

『ファング一家の奇想天外な秘密』予告編

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