41歳vs27歳の新旧王者対決は、若きジョシュアの勢いに軍配
2017年4月30日(現地時間29日)、イギリス・ロンドンのウェンブリー・スタジアムにて、ジョシュアとクリチコが対戦した。共にオリンピックで金メダルを獲ったうえでプロ入りし、順当にチャンピオンとなった。
クリチコは1996年にプロデビュー。ジョシュアは2013年にプロデビュー。二人とも、長いリーチを生かして左ジャブから強烈な右を打ち込むオーソドックスタイプ。特にクリチコは、スティール・ハンマーと呼ばれる右ストレートに定評がある。
出だしは互いに様子を見合う静かな展開。第5ラウンドにジョシュアがいきなりラッシュをしてダウンを奪うも、スタミナを浪費し、後半押し込まれ、逆に第6ラウンドにはクリチコの右でジョシュアがダウン。その後疲れたジョシュアは守勢に回り、ポイントではクリチコが優勢を守りながら第11ラウンドへ。
ドラマは急にやってきた。11ラウンドのゴングを聞いたその瞬間、ジョシュアがそれまでの疲れを吹き飛ばしたかの動きでラッシュし、クリチコから再びダウンを奪う。
自分の勝利を確信し、ポイントアウトを意識しすぎていたクリチコは完全に不意を突かれ、思ってもみなかった深いダメージを負ってしまう。さらに頭を吹っ飛ばされるようなアッパーを食らったクリチコは、結局このラウンドでさらにダウンを繰り返したあとで、押し込まれてレフェリーからストップされてしまった。
試合はまさに劇的な逆転で、ジョシュアが勝利を得た。これでジョシュアは19戦19勝19KOの、完璧なレコードを積み上げたが、これまで7ラウンドまでで全員を倒してきただったジョシュアが、長期戦でもスタミナを維持できて、強敵による苦戦を強いられても逆転できるハートの持ち主であることを証明できたことが何よりも大きい。
二人の戦いは結局遅すぎた、という結果にはなったが・・・
クリチコは試合前に(14歳の二人の年齢差について問われて)二人の試合の実現が、クリチコにとって遅すぎたのか、それともジョシュアにとって早すぎたのかは、戦ってみればわかるよ、とコメントしていたが、結果的には円熟の王者が若さと才能で駆け上がってきた若き天才の勢いに飲み込まれることになった。
その意味では、クリチコにとっては40歳を超え、体力面では自分が衰えたことを認めざるを得ないだろうが、試合自体は、11ラウンドの油断さえなければ、ジョシュアを抑え切って勝利を得ていたかもしれなかった。
彼が引退をするか、それともリマッチを目指すかはいまのところわからないが、順風満帆で怖いもの知らずで頂点に立ったジョシュアに対して、そのキャリアと円熟したテクニックの怖さを身に沁みて感じさせたことだけは間違いないだろう。