2輪乗りの間より、精神世界に興味のある方の間で有名な本です
この小説は著者のパーシグが1968年に、11歳の息子クリス(クリストファー)と、ふたりの友人と行ったミネソタから北カリフォルニアへの17日間のモーターサイクル・ツーリングの体験が、下敷きになっています。
邦題を見ると「2輪車のメンテナンス本?」と一瞬勘違いしてしまいますが、原題に the Art of ・・・とつくように2輪車の実用書ではなく、哲学・精神世界に関心がある人向けに記された著作です。でも、ツーリングやメンテナンスが好きな人が読めば、「あるある」、「そうそう」とうなずきたくなる記述が随所にあり、良質なロードムービーを鑑賞するような気分で、読み進めることができると思います(本著の重要な要素ではありますが、「パイドロス」とか「シャトーカ」とかの哲学的・精神世界的な概念に対する読み手の理解を強いるところがあるので、それを楽しめるか楽しめないかで読み手を選り分ける本ではあります・・・)。
興味のある方は、ぜひご一読を!
この本の書評については、日本語でいろんな方がブログなどに記述しているので、あらすじなどを知りたい方はググって(Googleなどの検索エンジンでウェブ検索して)ください。
個人的には、この本とはなんとなく「縁」があるような気がしています(←思い込み)。翻訳版は1990年に初版で、めるくまーる社から刊行されましたが、同社には私の友人が入社していました。その縁で、当時編集部に在籍していた2輪専門誌のパブ記事の紹介文を書いたのが、私が同書に触れたきっかけでした。
ロサンゼルスから帰りの飛行機で隣に座ったウガンダ人の紳士など・・・海外旅行の旅先で知り合った人に同書のファンだった人が多く、そこにも不思議な縁を覚えました。誰一人、ライダーだった方はいませんでしたけどね(苦笑)。
じつはパーシグの息子のクリスは、旅の後に精神を病み、そして同著刊行の5年後の1979年に暴漢に襲われ命を落としています。そして過去30年間、メイン州で暮らしていたパーシグは体調を崩し、残念ながら先日お亡くなりになりました。
「禅とオートバイ修理技術」の翻訳版は一度絶版になりましたが、現在はハヤカワ文庫NFで上下巻各864 円(税込)で発売されています。私が持っていた本は知人に借りパクされたので(笑)、これを機に購入し読み返してみようかな・・・と思っています。