記憶を無くした殺人マシーン、ジェイソン・ボーンと、彼の素性を知る組織との戦いを描いた「ボーン・アイデンティティー」の続編。シリーズ的には第5作目にあたるが、第4作「ボーン・レガシー」にはジェイソンは登場しないため、実質的には4作目であると言える。

愛する者を失いながらも取り戻した記憶が、偽りのモノであったとしたら?

一種の洗脳と特殊訓練により一流の暗殺者を作り上げるというCIAの「トレッドストーン作戦」によって生み出された最強の男、ジェイソン・ボーン。
彼はあるオペレーション上のアクシデントで記憶を無くしてしまうが、文字通りの自分探しを続ける過程で、本人は徐々に人間性を取り戻し、人を愛することも覚えていく。多くの暗い秘密を知る彼を抹殺しようとするCIAとの抗争においても、自分を追う敵を殺すことをためらうボーンだったが、やがて自分が何者かを知り、自らの過去を清算すべく、逃げるのではなく敵に立ち向かうことを決意する。

本作「ジェイソン・ボーン」では、ボーンを生み出すことになったトレッドストーン作戦、そしてそれらにまつわるすべての記憶を取り戻し、清算したはずのボーンの前に、過去の同僚ニッキーが現れることから始まる。ニッキーは彼が取り戻したはずの記憶の裏にさらなる陰謀が隠されており、しかも彼の父親も関係していたと告げるのだ。
ニッキーはボーンの目の前で殺されてしまうが、ボーンは再び自分のアイデンティティー (存在意義)を見出すべく、戦いへと身を投じるのである。

新作では時事ネタ的な新作戦を取り入れつつも、従来の流れを踏襲

本作はボーン・シリーズのリブート作品であると言える。恐らくはもう2,3作、ボーン・シリーズをリリースするつもりなのだと思われる。

これまでのストーリーとジェイソンのアイデンティティーのバックボーンとしての”トレッドストーン作戦”があったが、本作からは”アイアンハンド”という、CIAが全世界を監視するためのプラットフォームの確立という新しい構想があり(随所にスノーデンの名前が出てくるのも、スパイスとして効いている)、この推進者であるCIA長官がボーンを危険分子として排除しようと躍起になる。同時にボーンは、自分が長い戦いの末にようやくたどり着き、納得したはずの自分の記憶のさらに深い層に新たな陰謀が存在していたことに愕然とし、改めて自分探しに邁進する。両者の目指すところは全く違うし、噛み合ってないのが面白いw。

いずれにしても、ストーリーの基本ラインはこれまでのボーン・シリーズと寸分違わず同じだし、アクションも今まで通り派手さがない分シンプルかつリアリティに溢れたもので、多くのスパイアクション映画と一線を画したボーン・シリーズのそれをきちんと踏襲している。
目新しさがないとみるか、安心してボーンらしさを楽しむかは観客次第だが、直接の前作である「ボーン・アルティメイタム」から10年近く経っていることを考えると、本作が初めてのボーン・シリーズである観客はかなり多いものと考える。とすれば、スタイルを刷新するよりは、これまでのスタイルを踏襲しつつ磨きをかけるほうが得策であるといえるかもしれない。

その意味で、本作は製作陣と主役を演じるマット・デイモンの、従来のファン向けではなく、改めてファンを作っていくとする決意の表れであるのだろう。

『ジェイソン・ボーン』First Look

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