子供の頃に読んだ童話や絵本で描かれた、狼に育てられた人間の冒険譚「ジャングル・ブック」。
少年モーグリと狼や黒豹、熊などとの友情に萌え、人間を忌み嫌う悪魔のような虎シア・カーンとの戦いに興奮した。
その「ジャングル・ブック」がフルCG映画として蘇った。
©Disney

愛に満ちた動物たちの仕草に魅入り、悪魔のような猛獣の襲撃に怯える。
これが本当にCG?

モーグリ少年以外はすべてCGらしいが、登場する動物たちは、表情や仕草こそ時として人間のように豊かだが、全体としては実に動物らしく本物としか見えない。
特に、モーグリを実の子供として愛情深く育てた母狼ラクシャや、赤ん坊のモーグリを拾い上げた黒豹のバギーラの慈愛と威厳に満ちた表情は素晴らしいし、彼を憎悪する虎シア・カーンの憎しみに満ちた形相はあまりにも凶暴だ。

モーグリ少年は狼の仲間として育てられるが、彼を執拗に狙うシア・カーンの脅威に狼たちが動揺するのを見て、群れを離れることを決意する。狼たちはモーグリを人間ではなく狼として教育してきたが、シア・カーンはいつかモーグリが人間として覚醒し、自分を殺しにくると確信している。シア・カーンはジャングル最強だが、かつて人間が使う恐怖の道具”赤い花(火のこと)”をモーグリが使いこなすことを恐れているのだ。
実際、モーグリは道具を巧みに使えるが、狼たちは狼らしく振る舞うためには道具を捨てるように教える。しかし、狼の群れを離れたモーグリは、罪悪感を感じつつも生き延びるために道具を使い始めてしまうのだ。
(群れを飛び出した先で知り合ったクマのバルーは、罪悪感を感じる必要なんてない、とモーグリに教える。バルー流、モーグリ流でいいじゃないか、と。彼はモーグリに歌や自由に生きる楽しさを教えてくれるのだ)

人間と自然が共にある荘厳さと難しさ

本作は人間と自然が共にある荘厳さと難しさを巧みに形にしている。
バギーラや狼たちはモーグリが道具(人間の知恵)を使うことを良しとせず、他の動物と同じに振る舞うように指導するし、シア・カーンもまたモーグリが人間であるからこそ忌み嫌う。

とはいえモーグリは道具を作り使うことで、最強の敵シア・カーンと闘うことになる。狼もクマも黒豹さえも太刀打ちできない最強最悪の虎と闘うために、ついに火をその手にとることになるのだ。

人間が人間であることが、他の動物たち、そしてジャングルと決別しなければならない。とても哀しい結論というか運命が待ち構えながら、人間もその力を使ってジャングルを破壊せず、動物も自分たちが爪や牙を使うように人間は道具を使うのだと理解してくれたなら、本物の共存が実現するのにと、考えさせられる。

「ジャングル・ブック」MovieNEX予告編

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