行方不明になったニモを必死に探すマーリンを援け、マーリン親子の親友となったドリーは、ひどい忘れん坊で、過去の記憶をほとんど持っていないが、たった一つ家族に関する記憶だけは忘れずにいた。その家族を探すことを決意したドリーは、彼女への恩義を感じるマーリンとニモとともに、新たな冒険の旅に出るのである。
前作『ファインディング・ニモ』の1年後を描く続編
マーリンのニモ探しを手伝い、二人のかけがえのない親友になったドリー。相変わらずの忘れん坊ぶりは周囲を困惑させるが、それでも愛すべきキャラクターも変わらずで、大冒険の余韻も消えてみんな仲良く暮らしていた。
しかし、ふとしたきっかけで、ドリーは生き別れになった両親のことを思い出し、彼らを探す旅に出ようとする。それを止めようとするマーリンとニモだったが、ドリーの決意を知り、彼女を助けるために協力する。
前作はさらわれた子供を救いに命を賭ける親の姿を感動的に描いた作品だったが、今回は子供が親を探す旅に出るという設定である。安定したプロットに、懐かしのキャラクターたちが観ている者を安心して物語の中に没入させるし、新しいキャラも魅力たっぷりで、すぐさま前作を超える感動を期待してしまう。さすがはピクサーといったところだ。
大切な人たちのために頑張ろう。そう思える佳作
ドリーはほんのわずかな過去の記憶も無くしてしまう、先天的な欠陥を持つが、持ち前の明るさと決断力で、たくましく生きてきた。心配性で思慮深さが取り柄のマーリンはそんなドリーを心配でしょうがないが、息子のニモはドリーの逞しさを信じ切っている。
ドリーは全てを忘れてしまうけれど、家族の記憶を取り戻すことで自らの道を切り開く決意をするが、近所への道筋さえ忘れてしまう自分に自信が持てず、マーリンとドリーに手助けを依頼せざるを得ない。しかし少なくともニモはドリーが持つ行動力の凄さを信じているから、助けるのではなく、親友として共に行動するのだという気分で動くのだ。そして、息子を心配するだけで無く、ニモを信じることを覚えたマーリンもまた、ドリーを心配するのではなく信頼することを選ぶのだ。
本作は、さまざまな欠点や欠陥を抱えた者たちが、そうしたハンディを超えて自分の可能性を信じて運命に立ち向かう姿を描いている。ドリーは記憶障害を、ニモは不完全なヒレを、マーリンは心配性ゆえの杞憂を抱えている。しかし最後は、愛する者たちのために勇気を振り絞って行動することを選ぶ。
前作『ファインディング・ニモ』のテーマであった家族愛に加え、親友を想い、自らを省みぬ勇気を示すキャラクターたちの姿は、実に感動的であり、自分たちもまた、大切な人のために頑張ろう、そう思い返すきっかけになるはずである。