財テクエンターテインメント番組を襲った最悪の災厄
主人公リー・ゲイツは、業界人然とした、ある意味ちょっとした嫌味な野郎w。経済情報を面白おかしく誇張して伝えるエンターテインメント番組の司会者として、我が世の春を享受しているが、バツ3で、慰謝料ばかりが増えていく、私生活的にはかなりの破綻者だ。
そんな彼の能天気な太鼓判を信じて、全財産をスってしまったワーキングプアの青年カイルは、逆恨みして、ゲイツの番組をジャックし、ゲイツに爆弾入りベストを着せて人質にする。
カイルを始めとする多くの投資家に大損を被らせた銘柄は、投資会社のアイビス・キャピタル。高度なアルゴリズムを駆使して、高収益での成長を続けてきたが、プログラムのバグにより突如として8億ドルもの損失を計上してしまう。しかし、その裏側には人為的な工作と欺瞞が存在していた。
分裂する米国社会を象徴するような事件を描く佳作
番組をジャックしたカイルは、自分たちが大損を被った責任は、アイビス・キャピタルの経営陣と、番組の司会者であるゲイツにあると主張、自分の見解と意見をテレビで放映することを要求する。人質に取られたゲイツは、最初こそ怯えて無様な姿を晒すが、徐々に有能なテレビ司会者としての自覚と才覚を取り戻し、カイルを時として過度に刺激してしまうものの、最悪の状況を視聴率に繋げる工夫を始めるのだ。
同時に、自分が推奨した銘柄であるアイビス・キャピタルの裏側に潜む恐るべき陰謀に気づくと、カイルへの同情を深めつつ、真相を明かすために決死の努力をする。
トランプ政権の誕生が決まったことで、現在米国の分裂が危ぶまれているが、本作は金融市場で大儲けする一部の富裕層に対する一般大衆の怒りが引き起こす”暴発”を予測していたと言えるだろう。メディアへの不信と、一握りの資産家に富が集中している現状を危ぶむ声であると同時に、そうした現実をいち早く娯楽作品の形として仕上げた、ジョディー・フォスターの手腕に感心せざるを得ない。
「ブラック・エンジェルズ」「ドーベルマン刑事」で有名な超一流漫画家 平松伸二先生書き下ろしのミニコミックもお見逃しなく。