生まれてからずっと、母親と共に狭い部屋に閉じ込められていた5歳の少年ジャック。決死の脱出を試みた彼がみた”世界”とは?

小さな部屋で暮らすママとジャックの秘密とは

ジャックの5歳の誕生日に、ママと二人でケーキを焼いた。ろうそくが無いことにニックは癇癪を起こすが、ママは謝るばかり。いつも食材を持ってきてくれるオールド・ニックにろうそくを持ってきてるように頼んで欲しいとジャックは懇願するが、ママは首を振るばかりだ。

オールド・ニック?
それは悪魔の名前だ。食事を食事を運んでくるのは悪魔なのか?

二人が暮らすのは狭い"部屋"。アパートで暮らす若い母親と幼い息子の物語かと思う。しかし実はそうではない。ママは7年前に誘拐されてこの部屋に閉じ込められた。ママを誘拐し、監禁している男こそがオールド・ニック。ジャックは彼との間の子供だった・・。

ママは何度か脱出を試みたが、部屋には電子ロックがかかっており、パスワードは男しか知らない。だから逃げ出すことができず、7年がすぎ、その間にジャックが生まれたのだった。

死体のふりをして脱出するジャック

ジャックが5歳になり、世界とは狭い部屋のことではなく、TVでしか見ることができなかったモノの多くが本当に実在することを理解できると感じたママは、彼に”本当のこと”を伝えた。誘拐のこと、世界は信じられないくらい広いこと、そして脱出計画のことを・・。

ママの提案はこうだ。風邪を拗らせてジャックが急死したことにする。カーベットにくるんだ”死体”を部屋に放置できないからオールド・ニックはジャックをどこかに捨てにいくだろう・・・そのとき逃げ出せ、というのがママの指示だ。

恐怖と不安に怯えながら、ジャックはなんとかオールド・ニックから逃げ出すことに成功し、そしてママを助けることもできた。誘拐犯も逮捕され、すべてがハッピーエンドに向かっていくと思われた。

地獄から逃れたあとにやってきた本当の試練

みたことのない”大きな世界”と、多くの人々に怯えるジャック。周囲の人々は幼い彼のPSTDを心配したが、実はジャックよりも、彼を護ることで必死に精神的安定を保ってきていたママのほうが、突然の解放の衝撃で神経的に参っていたのだった・・。

そして、ジャックの父親は誘拐犯そのものであり、周囲もまたジャックを被害者として見ると同時に、犯人の子供としてみる。そのことがさらにママを追い詰めていくし、少しずつ大人になっていくジャックの心を傷つけていくのである。

ジャックとママに、安寧の日はくるのか。
5歳児の彼がみた、真の世界とは・・・。

親子は、実は互いに愛し合うことで成立する相互扶助の関係であることを実感する傑作

ジャックにとってみれば、かつて閉じ込められていた小さな部屋は、世界そのものだった。
その世界はあまりにも狭く小さかったけれど、ママとの愛情が詰まっていた。

ママにとっては2度と戻りたくない地獄であったとしても、彼には母親と過ごした愛のある空間(彼女が必死に護り創ってくれた空間であったとしても)だった。確かにその空間では、自分を必死に庇護してくれようとしてくれた母親の強く濃密な愛情があったからだ。

この映画はある意味、少年の巣立ちを象徴した映画であると同時に、思ったよりも逞しく成長していく子供と、自分が思うより弱い大人(親)が、互いを必要としながら生きていくことの素晴らしさを教えてくれているのである。

「ルーム」本予告

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