伝統を守り続け、変わらないことが美徳でもあるハーレーダビッドソンの中で、最もそのヒストリーを最も強く感じさせるモデルはロードキングだと思っています。大陸を横断するために生まれた遺伝子を、最も強く感じさせるロードキングには、他のモデルにはない「ロマン」が溢れているんです。

憧れたオートバイは、ずっと変わらずに待っていてくれている。

前後のタイヤを覆うディープフェンダーにタンクオンメーター、左右2本出しのマフラーとそこから吐き出されるハーレー独特の重低音サウンド。極めつけはヘッドライトを覆うロードキングだけの個性、ヘッドライトナセル。今年で39歳になるボクが学生の頃、憧れてやまなかったオートバイこそが、このロードキングでした。

ボクが学生の頃のFLHR/ロードキングはエボリューションエンジンを搭載していました。その前はFLHという名前で「R」は無かったんですけど、根本となるスタイリングはほとんど同じまま。遡ってショベルヘッドやパンヘッドの時代でも、基本的にはそのスタイルを一切変えていませんでした。39歳という年齢の、ボクの記憶の中でロードキングは「今日までずっと変わらないまま」を貫いてくれている数少ないオートバイです。だからこそ、憧れの気持ちは憧れのままで、いつかはロードキングのオーナーに……という想いは、バイクに乗り始めて約20年間、ずっと変わることがありません。

最新エンジンって、本当に最良ですか?

スタイリングはキープコンセプトでも、時代に合わせてメカニズムはどんどん進化しますよね。ボクの憧れていたロードキングっていうのは、やっぱりエボリューションエンジンやショベルヘッド時代のもので、新型よりも「旧いハーレーが欲しい」と思っていたんです。けれど2016年モデルとして生まれ変わったロードキングは、新時代のビッグツイン「ミルウォーキーエイト」を搭載。それに乗った時、はじめてボクは「旧いハーレー」のほうがいい!という呪縛から解放されたんです。ホントですよ?

空油冷方式を採用したミルウォーキーエイト 107の排気量は1745cc!? 大排気量はアメリカの象徴ですよね。

エンジンの振動も、サウンドも、パワー感も!

スロットルを開けた瞬間のドンッ!と路面を蹴り出すフィーリングは、機械式で燃料を送り出すキャブレター時代のエボリューションよりは優しいフィーリングです。電子制御フューエルインジェクションのミルウォーキーエイト・エンジンは、そこから開け足した時にドカッと加速します。でもね、その時のフィーリングは紛れもなくハーレーダビッドソンなんです。ボクが知っている旧き佳きハーレーの走りにかなり近い味があります。もちろんキャブレター時代の荒っぽい走りっていうのも楽しいんですけど、低速の時や峠道のヘアピンカーブではやっぱり気を使って疲れますからね。半クラッチを多用して左手の筋肉がパンパンになったのを覚えています。旧いハーレーのクラッチの重さ、長い渋滞だと真面目に泣きが入るんですよ(笑)でもミルウォーキーエイトはクラッチも軽くなっていたので驚きでした。軽いクラッチ、ホントにありがたいです。

ちなみにアイドリング回転数が850回転まで下げられていることで、信号待ちなど、停車時の満足感もたっぷり感じられます。ハンドルとシートから身体に伝わる不規則なエンジンの躍動は、完調に整備されたエボリューションに通じるフィーリングでした。それに音もイイんです!ちょっとバサついたような、乾いたVツインのサウンド。音量も適度に大きくなっていて、クルージング中の自己陶酔感は最高でした。そういう「味わい」を持ったまま、旧いハーレーにつきものの「故障への心配」が無く、高速道路クルージングでの余裕。新型ロードキングは、まさに2016年製のヘリテイジなんです。

もしボクが今、若い頃に憧れた古いロードキングを買ったら、大事にして大事にして、遠くには走り行かずに過保護に扱うと思うんですけれど、ミルウォーキーエイト搭載の新型ロードキングならガンガン乗ると思うんです。それこそ東京~大阪とかの500km程度の距離ならひとっ飛び。やっぱりオートバイは乗ってナンボですからね。飾り物じゃなくてガンガン乗りたいじゃないですか!ハーレーらしさを味わいつつ、スタイリングの美学はずっと変わらない。そこが新しくなったロードキングの魅力の「核」だと思いました。

この1台だけで、オートバイ趣味のほとんどは満たされる

ずっと変わらない美しいスタイリングを眺めて、ひとり悦に入ったり、ピカピカに磨いて愛でるのも楽しいでしょうね。でも、ガンガン走って適度にヤレてきても、それはエイジングというもの。ロードキングのカッコ良さは色褪せません。それだって所有する歓びっていうものです。
そして、現代的なパフォーマンスと機械としての信頼性を備えていながら、ハーレーらしい味わいが楽しめる。つまり、ハーレーというオートバイを楽しむにあたって、ミルウォーキーエイト搭載の新型ロードキングはすべてを備えているんです。しかも、車体がスリムで、軽さや足着き性もツーリングファミリーの中では断トツの安心感。日本人の体格にもジャストフィットします。

シート高705mmは足着き性は言うにおよばずの両足ベッタリです。重量は379kgなんですけど、足がしっかり着くので「本当にそんなに重いの?」と感じました。ちなみに、跨ったままでのバックも余裕です。(ライダー身長/176cm)

変える必要のないものは変えないまま、時代に合わせて成長を続けてきたハーレーがエボリューションやツインカム・エンジンを経て辿り着いた答えこそがミルウォーキーエイト。それを搭載した伝統の体現としてのロードキングが素晴らしい完成度なのは当然の結果なのだ、と今では感じています。新型エンジンを搭載したロードキングの歴史は始まったばかりですけれど、きっと10年後もロードキングはロードキングのまま変わらないのだろうと思います。

時代に流されず、変わらない価値を保ち続けるハーレーダビッドソンの象徴のひとつ。その歴史の中にずっと続いているロマンのあるオートバイ。いつの時代も、ロードキングだけはそう呼ぶに相応しい1台だと、ボクは思っています!

HARLEY-DAVIDSON
ROAD KING
PRICE:300万7600円~
(価格はカラーによって変動)

www.harley-davidson.com