本作は、天才的なチューナーの風見潤と、いっちゃんこと、経理担当の中村 一路、板金担当の野呂清の3人を中心とした、街のチューニングショップ「メカドック」の活躍と、彼らをとりまく数多の自動車好きの若者や、チューナーたちとの交流を描いた青春漫画です。
主人公の風見潤はメカでありながらも、レースには自らドライバーとして出場する腕前の持ち主。いつかはメカドックを、F1マシンを手がける一流ショップに成長させたいという大志を抱いています。
しかし、かといって野心にばかり忠実というわけでもなく、普通の車好きの客たちのために、一生懸命チューンナップ作業に集中する真面目さと、素直に車が好き、という若者らしい熱い気持ちを持っている好青年なのです。
昨今では車をチューニングしようとする若者は、決して多くないと思いますし、何しろ最近の車はみなコンピューター制御で、市井のショップにはなかなか手が出ないという状況になっているので、メカドックのようなチューニングショップをヒロイックに描いた作品は、もう今後は出ないかもしれません。
それだけに、テーマや設定は、1980年代という時代背景を強く意識させるもので、今読むと古臭さを感じるかもしれませんが、自動車に夢を持ち、国産車をヨーロッパの一流ブランドたちに負けないパフォーマンスカーに仕上げてやろう、と日々挑戦し続けた男たちの生き様は、いつの時代であっても心を動かす熱さがあります。
自動車産業はEV化や自動運転技術など、今までとは全く違う進化を求められ、過激な変容を遂げつつありますが、メカドックの世界は過去のものではなく、いまでも”これからの”クルマ作りに向けて、情熱を傾ける多くの若者が存在しているはずです。
21世紀のメカドックたちが、やがて日本を世界を変えてくれるはずなのです。