長年勤めたテレビ局を2年前に辞めた俺は、採用される見込みも期待もない漫画を描きながら、あてもなく新しい生活を始めた。57歳にもなるというのに、なんたるざまだと思いながらも、この歳になってまた、本当に自分がやりたいことが見つからない状況を積極的に打開しようともしていない自分が、案外面白くもある。
そんなとき、生活のためにたまに作業を手伝っているバイク屋の友人から、気が進まない仕事を頼まれたーー。
『雨は これから』(©東本昌平先生・モーターマガジン社)より

友人のバイク屋につくと、そこには友人と、気に入らないタイプの若者が待っていた。若者の絶不調の愛車(ゼファー)の調子を見てもらいたいというのだ。

俺は気が進まなかった。
その若者は好きなタイプでなかったし、誰かがいじったバイクの修理を請け負うのも嫌だった。だから速攻で断りたかったのだが、何十年も続いたサラリーマン生活で染み付いた妥協が、俺に断固たる態度をとらせなかった。

テレビ局を辞めたのは、頼まれればなんでもやるし、逆にどんなことでも誰かに頼む、そういうあり様が嫌だったからだ。自分が本当にやりたいことを探す。嫌なことはやらない、そんな自分でいたくて選んだ道のはずだ。

しかしそれでも友人に頼まれれば、断ることはできない?それとも我を通して断るべきか?
俺は迷った・・・。

あなたなら、どうする?