前編に引き続き、フェラーリ史上もっとも快適なモデルのひとつと言ってもいい「GTC4ルッソ」を試乗した印象を報告しよう。(Motor Magazine2016年9月号)

GTC4ルッソ:全長4922mm×全幅1980mm×全高1383mm、ホイールベース2990mm、車両重量1995kg、ラゲッジルーム容量450~800L、エンジン V型12気筒DOHC、ボア×ストローク94.0×75.2mm、圧縮比13.5、最高出力507kW(690ps)/8000rpm、最大トルク697Nm(35.7kgm)/5750rpm、燃費 6.7km/L、トランスミッション 7速DCT、タイヤサイズ フロント245/35ZR20、リア295/35ZR20、最高速335km/h、0→100km/h加速 3.4秒 ※EU準拠

高回転まで回せば回すほど刺激的なV12気筒エンジン

さて走り出そう。エンジンに火を入れるとV12サウンドが……あれ?意外とおとなしい。室内の高い静粛性が確保されていることもあるが、荒々しいサウンドは耳に届いてこない。それはタウンスピードでも同じである。2000rpm以下で走るような街中では心地よいエンジン音が耳に届く程度である。エンジンサウンドも街に溶け込んだフェラーリと言っていい。

しかし、いったんワインディングに繰り出せばそこではV12の魅惑的なサウンドが聞こえてくる。うん、これがフェラーリのV12サウンドだ。回せば回すほど痛快なこの音が聴きたくて、ついついウインドウを下ろしてしまう。室内は快適な空調が保たれているのに、である。

季節は初夏。この地方はちょうど夏のバカンスが始まっていたようでところどころ渋滞に見舞われることもあった。そこで強いられるのは頻繁なストップ&ゴーや微低速での走行である。しかしそうした場面でも静粛性が保たれ、贅が尽くされた室内は快適な空間を提供してくれた。これなら日本の渋滞でも十分に快適だということが容易に想像できる。

街中でもワインディングでもつねに運転することが楽しい

ところでフェラーリは、コーナリング時に車体を安定させる制御システム「SSC(サイドスリップアングルコントロール)」を13年デビューの458スパイダーから搭載しているが、そのSSCはこのGTC4ルッソで早くも第4世代のSSC4へと進化している。

このSSC4は、FFに採用されていた4WDシステム「4RM」に後輪操舵を加えて「4RM-S」に進化させ、さらにE-Diffディファレンシャル、SCM-Eサスペンションダンピングなども統合し、車両すべてのコンポーネントとビークルダイナミクスコントロールを制御しているというわけだ。

これが実にドライバーの意志に忠実な動きを見せてくれるGTC4ルッソの核心である。ハンドル操作ひとつに対して瞬時に反応するのだ。今回の試乗コースで悪路や雪道などを走る機会はなかったが、フェラーリは、すべての路面状況で〝フェラーリパフォーマンス〞を発揮すると言う。

いいクルマと過ごす時間は経つのがとても早い。そろそろ、GTC4ルッソをフェラーリのスタッフに返却しなければならない。その前にもう少し一緒にいたい、試乗のゴールに着く前に時間の許す限りハンドルを握っていたいという気持ちを抑えきれずに近くにあったスーパーマーケットの駐車場に立ち寄ってみた。そう、GTC4ルッソはそうした駐車場(日本ならコンビニか)にも気軽に駐車できる気安さがある。そんな場面ではリアステアも大いに貢献するのだろう。思っていた以上に小回りが効くのだ。いままでこんなフェラーリってあっただろうか。

GTC4ルッソはフロント245/35ZR20、リア295/35ZR20サイズのタイヤを装着する。

さて、GTC4ルッソとの至福の時間は終わりを告げた。次に会えるのは日本でとなるだろう。そうそう日本でのデリバリー開始は2017年第1四半期、価格は3470万円と発表されている。早く日本でいつもの道を走ってみたいものだ。文:千葉知充(本誌)/写真:フェラーリ ジャパン

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