Kawasaki ZZ-R1100。1989年にドイツ ケルンショーにて初登場したこのバイクを想うとき、ライダーの多くは畏敬の念を抱かずにはいられないのではないだろうか。時速200キロをリアルな数字に変えたのがZ1であったとすれば、250キロはニンジャGPZ900Rが引き寄せた。そして、実現不可能に思えた真の夢の数字、時速300キロを誰もが手に入れることができる現実の数字に変えたのが、同じくカワサキのZZ-R1100だったのだ。月刊オートバイ2016年8月号特別付録『RIDE』より

当時量産市販車としては最強の147psを叩き出す1052ccのエンジン。ボリュームたっぷりのフルカウルで包まれたその姿には、周りを圧倒する威容があった。そして320km/hフルスケールのスピードメーターは伊達ではなかった。フルスロットルを続けていけば、きっとその領域に到達する、そんな確信をライダーに与えることができた、初めてのバイクこそがZZ-Rだ。

僕自身もZZ-Rには思い入れがある。わずか2年ほどではあったが、愛車として、異国(マレーシア)の地で共に楽しくエキサイティングな時間を過ごしたからだ。

1990年代後半。ほぼ100-150ccのスモールバイクしか走っていなかったマレーシアで僕が手に入れた夢のバイク、これもZZ-R1100だった。今の東京で言えば、ブガッティのハイパースーパーカーくらい目立っていた。

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いま僕はZIIに乗っている。
かつては国内最速を誇った”ナナハン”の雄も、いまとなっては250cccあたりのバイクにもついていくのが精一杯のロートルにすぎない。というより、もはやクラシックバイクだから、壊さないように労わりながら走る(笑)。
いまさら世界最速バイクに乗りたい!という欲求はほぼないのだが、それでも当時自分が乗っていたバイクが、世界中の誰よりも速く走れる、という思いは問答無用にプライドをくすぐる強い満足感ではあった。今でも例えばYAMAHA YZF-R1とかKawasaki Ninja H2を手に入れたら同じような想いを抱けるのだろうとは思う。
ただ、今時の最速スーパーバイクはとてもじゃないが扱いきれる自信がないので、手に入れるチャンスがあったとしても、決して手を出そうとはしないだろう。結局のところ僕にとっては、世界最速のバイク、といえば、いまだにZZ-R1100であり、あの頃密かに試したその実力の片鱗を懐かしく思い出すだけなのである。