BMWの100年を語るときにその中心となるのはやはり歴代3シリーズだと言っていいだろう。
今回はその源流となる「2002」も表紙を飾った。(Motor Magazine2016年5月号)

Motor Magazine2016年5月号第一特集「BMWの現在・過去・未来」より。

ノイエクラッセから02シリーズ、3シリーズの原点はここにある

撮影車データ=1972年生産モデル、1973年登録(昭和48年)、全長4250mm×全幅1570mm×全高1410mm、ホイールベース2500mm、車両重量1000kg、直列4気筒SOHC 1990cc、ボア89mm×ストローク80mm、最高出力130ps/5800rpm、最大トルク18.1kgm/4500rpm、5速MT、最小回転半径5.2m、最高速190.5km/h

BMWといえば、多くの人が3シリーズをイメージする。初代モデルの登場は1975年だが、その原点は2ドアセダンの「2002」である。
66年に「1600-2」としてデビュー、後に「1602」に改名されて、その2リッター版が「2002」となる。〝ノイエクラッセ〞(ドイツ語で新しいクラスという意味)と呼ばれた4ドアセダンは、1961年に「1500」でデビューしている。

1971年に発表された2002tii。最高速は195km/hを誇った俊足モデルである。

生産から44年が経過しているがコンディションはかなりいい

今月の表紙を飾ったマラガレッドの「2002tii」は、機械式インジェクターを備えた2リッター4気筒SOHCエンジンを搭載したハイパワーモデルである。このクルマは72年に生産され、当時正規代理店だったバルコムが販売し73年1月に登録したものだ。現オーナーは4代目になるそうだが、歴代のオーナーが大事にしていたことは細部の状態を見てもよくわかる。悩みの種はパーツの入手が難しいことだという。生産されてから44年経っているから仕方ないが、パーツが出たときには、今は必要なくても買っておくそうだ。

現存する「2002」の多くはダッシュボードなどにひび割れなどが見られるが、撮影車はとても綺麗な状態の内装を維持していた。これは屋根付きガレージで保管していたことが大きな理由だろう。

1度手放したが再び入手

実は、現オーナーは以前に「02」の保有経験があり、それを手放してしまったのだが再び現車に出逢い、入手したという。それほどまで「02」にひかれる理由は何なのか。
BMWを何台も乗り継いで、古いBMWにも興味を持つようになったようだ。こんなに素晴らしい乗り味の原点に遡って体験してみたいと思ったからだろう。

撮影当日もスタジオまで自走できた2002tii。

アイドリング状態で力強さが伝わってくる

私にとっても「02」は特別な存在である。初BMWが「2002ti」だったのだ。
40年以上前、六本木で会食していると某メーカーの偉い人に「君はお酒飲んでなかったよな。代わりにクルマを運転してくれないか」と言われたのである。それが「2002ti」だった。とはいっ
ても研究車両なので、絶対に事故を起こせない状況である。

オーナーはほぼオリジナルの状態で保存している。

エンジンをかけると低音の排気音が響き、走り出す前から力強さを感じた。床から生えたペダル類を操作するのは緊張したが、1速に入れクラッチペダルをゆっくり戻しながら右足に力を入れると「2002ti」はスムーズに走り出した。

いつでも走れる状態にしていところが素晴らしい

ペダル操作にダイレクトに反応するから扱いやすく、ハンドルも遊びが小さくタイヤがしっかりと路面を掴む感触が伝わってくる。車両感覚が掴みやすい形なので想像以上に運転しやすいクルマだ、というのが初めてBMWを運転したときの第一印象だった。

すぐに必要なくてもパーツが出たら買っておくのだと言う。

撮影車の「2002tii」は車検を取っていていつでも走れる状態にしてあるところが素晴らしい。これこそBMW流の保存法だ。

現オーナーばかりではなく歴代オーナーが大切にしてきたことがわかる。

BMWAGにはクラシックという旧いクルマをレストアする部門がある。BMW AGが所有している歴代のBMWモデルは、ミュンヘンの本社前のミュージアムで見られるが、一部はイベントに登場して実際に走ることがあり、さらに我々ジャーナリストに運転させてくれることもある。これはある意味で新型車試乗会より刺激的だったりする。「2002tii」のオーナーはそれを自分のものにしているのがなんとも羨ましい。(文:こもだきよし/写真:永元秀和)

旧車を運転することはある意味、新型車よりも刺激的だったりする。