なぜチェーンの遊び量を正しくしないといけないのか。その理由は、張りすぎはリアサスペンションの動きを悪化させ、さらにはドライブ軸のオイルシールが破損することもあり、後輪の直前にオイルが流れるから転倒の可能性が非常に大きくなる。逆に、緩すぎてもドンツキに似た症状が出てしまう。だから、チェーンの遊びは重要なのです。
最もチェーンが張るのは写真の3点が一直線になったとき。ここで1cmの遊びにする (Bikers Station@モーターマガジン社)
ドライブ軸、スイングアームピボット、リアアクスルが一直線に並んだ状態でドライブチェーンの遊びは最少になる。この状態で約1㎝の遊びにするのが基本。そして同時に、後輪を少しずつ回して、遊びが均一かを確かめるのも重要なのですが、チェーンの遊び量の測り方はメーカーによって違うので、必ずオーナーズマニュアルをチェックしてからやる事が大切。
ムルティストラーダは35~37mm、ハイパーモタードでは72~74mmを指定するドゥカティ (Bikers Station@モーターマガジン社)
同じドゥカティなのに2台のチェーンの遊び量がこれほど違うのは、ドライブ軸、スイングアームピボット、リアアクスルの3者が、ムルティストラーダは比較的一直線に近く、ハイパーモタードはスイングアームピボットの位置が相対的に高くて3軸の関係がより"への字"に近いためだ。への字に近いということは、これをまっすぐにすると、ドライブ軸とリアアクスルの軸間がうんと長くなり、結果としてチェーンも大幅に張るのだ。常識とされる30~40㎜の遊び量をハイパーモタードに与えたとしたら、張りすぎも張りすぎ、リアサスペンションはまともに上下しないだろう。
チェーンというのは、なんとなくたるんでなければいいというような、あまり重要視されない傾向にある。しかし、遊びの量を適正に合わせるだけで、サスペンションの動きが変わるなど、かなりライディングに大きな影響を及ぼす重要なパーツとなっている。
そして、その重要なチェーンの遊びの量というのはメーカーだけではなく、車種によっても違ってくるので、まずはオーナーズマニュアルをチェックして適正値知る事が大切です。
そして、ショップに調整を依頼する時でも、自身でまず、適正数値を伝えることが必要なのです。