1985年から2007年までの伝説的企画、特集を一冊に凝縮。この連載では、モーターマガジン社全面協力の元、同社出版誌である【名車の記憶】ホンダスポーツクロニクルより、ホンダの名車の歴史を振り返り、紹介をしていきます!(あぁこ@ロレンス編集部)

相手が誰であろうがなんでも来いの心踊るスポーツモデル『シビックタイプR』に刺客が現れました!対するは2ℓターボ代表格とされる『インプレッサWRX STiバージョンIV』、WRC参戦として高性能モデルに「WRX」と名付けられ、新世代ユニットBOXERMASTER-4が搭載されています。

向かう所敵なしパフォーマンスの高いがシビックタイプR vs 2ℓターボ代表するインプレッサWRX STiバージョンIV

今回は、なんとフィールド競技のハンマー投げに例えて両車種の走行性能に注目しています。全身の筋力と瞬発力、そして力学を踏まえた高度なテクニックも要求される投てき競技のハンマー投げですが、鉄の玉は車重、鎖はサイズに見立てたそのクルマの実力を箱根でためされました。 さて、意のままに振り回す快感が楽しめるのはどちらなのでしょうか。

では、このタイプR、何が魅力なのか、それは10kg&1mのハンマーを振り回す玉の力。そう、パワーだ。おそらくこのサイズならば、100psもあれば十分で、150psあれば相当に自由自在に振り回すことができる。にもかかわらず、そこには185psという力が宿されている。となれば、こうれはもう相当元気よく振り回せるわけで、なおかつそこには、力の他に「気持ち良い」という要素が加わる。特にVTECの切り替えポイントでは、誰もが即分かるほどにハッキリと音色が変わり、伸びの良さを確認できる。

さらに、本来いくら10kg&1mという組み合わせでも、そこにある力が大き過ぎれば、少しフラついてくるものだが、このタイプRにはそれを許さない、しなやかで限界の高い足まわりが与えられる。また、比較的長めのホイールベースにすることで安定性も高いが、ヘリカルLSDなどのサポートもあって、相当に向きは変えやすい。つまり、動きは軽快かつ力強く意のまま、それはある意味で完璧なのだ。

では、一方のインプレッサWRX・STiバージョンⅣではどうか?くさりの長さはほぼ一緒とコンパクトで、鉄の玉は12kgとやや重い。が、それを振り回すための力は、もう有無を言わせぬ280ps。そう、完璧にキレた魅力。踏めばどこからでも爆発的な加速が得るどころか、その力に見合った足まわり、4駆ならではの強力なトラクションを、ことごとくヒネりつぶすほどの力がある。自由自在どころではないのだ。だから扱い方次第では、何をしでかすかわからない。そこにはスリルさえある。つまり、最適サイズにぶちキレのパワーの組み合わせは、タイプRの持つ軽快感はそのままに、さらに強烈なアブナイ薬を加えたもの。シビれること間違いナシ。

◉HA1998年5月26日号掲載

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ただし、どちらも振り回して快感を得るには、それ相当のテクが必要になる。軽量&コンパクトなハンマーは自由自在に扱えるが、そのためには発揮できるパワーをコントロールする人間の理性が求められる。そう、至上の快感をコントロールするのはキミ自身、というワケなのである。(河口)
◉HA1998年5月26日号掲載

余談ですが私、あぁこは最近栃木県でシビックタイプRを見かけました。旧型シビックタイプRを見かけるのはなかなか貴重な事ですが、20年近く経っても長きにわたり愛され続けているクルマなのだと再認識した瞬間でした ❤︎