近未来も、レースとクルマには濃密な関係が
思えばクルマとレースは、いつの時代も切っても切れない濃密な関係にあります。2016年末からフォーミュラEシリーズのサブイベントとして開催される『Roborace Championship』は、クルマの「カッコ良さ」が行き着く未来の姿を、スタイルやメカニズムだけでなく、レースとしての見どころでも、しっかりアピールしてくれそうです。ちなみにコンセプトカーデザインは、ドイツの工業デザイナー、ダニエル・サイモン氏が描いたもの。バーチャル・ワールドでの戦いを描いたSF映画『トロン:レガシー』のライトサイクルなどを手がけてきた、実力派です。ー
10チームに2台ずつ、計20台が1時間を戦い抜く『Roborace Championship』ですが、動力性能など走りのパフォーマンスに関わるハードのスペックは、基本的に横並びなのだとか。レーシングドライバーの代わりに「運転」してくれるAI(人工知能)のプラットフォームも、全車で共通となります。それじゃあどこで優劣がつくのか、勝ち負けを競い合うのか…といえば、「早く走るためのロジックで差をつける」ワケです。
勝つためのロジックには、現代のレースにも通じるものが…
実戦では、たとえばタイムを削るための攻めの走りとバッテリーを温存するための抑えの走りを、バランス良く組み立てていく戦略が必要になります。経験値を蓄積して学習していくディープラーニングというファクターも、自動走行の精度や安全マージンを高めるためには欠かせない「マシン・チューニング」のキモとなるでしょう。もっともそれらは、現代のレースで勝つためのロジックと実は同じもの…なのかもしれません。
ドライバーとしての「頭の回転の早さ」を支えるAIエンジンは、米国の半導体メーカー『NVIDIA(エヌヴィディア)』の製品です。もともとコンピューターの画像処理に関わるGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)を開発、販売する企業ですが、その真骨頂が、演算処理まで含めた高速・高精度な自律走行車用の開発プラットフォームでした。自分のクルマが今、どこを走っているのか、周囲の障害物はどうなっているのか、といったさまざまな情報をカメラとやセンサー、ナビゲーションデータなどによって認識し、そのデータを統合、分析して、もっとも安全な最適ルートをリアルタイムで算出できる最新・最強のAIシステムです。NVIDIAのテクノロジーはほかにも、PCゲーム開発の現場などで世界中の企業に採用されています。
その圧倒的な「パワー」がどんな戦いを繰り広げてくれるのか…開幕戦がとても楽しみです。さらに、そこで得られたさまざまな実走行データや経験値は、これから市販される自動運転車の面白さにも、しっかりフィードバックされていくのかもしれません。