体調を崩して職場を長く離れていた女性、サンドラ。ようやく来週から復職できると思っていた金曜の朝、突然解雇の知らせが彼女に届く。業績が振るわない勤め先では、ほかの従業員に対して「彼女を解雇すればボーナスを出せる」と、説明し、彼らにサンドラの解雇を受け入れさせていた。
サンドラは上司に直談判し、他の従業員16名の過半数がボーナスを諦めることに同意するなら、サンドラの復職を認める、という言質をとる。月曜の朝、皆に投票させようというのだ。
この言葉を信じ、サンドラは早速仕事仲間たちを説得するため、彼らの自宅を訪問するのだが・・・。
淡々とした展開の中で表現される、職を失うという辛さと仲間に捨てられたという孤独感
本作では、仕事仲間に見捨てられたショックに打ちひしがれるヒロインが、生活のために必死に彼らに翻意を説得しに回る、という非常に淡々として地道な行動を、週末の二日間を通して描かれている。とにかく、恐ろしく地味な映画だ(苦笑)。
サンドラは、仕事仲間に懇願し、居留守を使われ、邪険に追い払われ、時に心が折れるものの、自分の復職に同意してくれる仲間も現れ、その度に気力を振り絞って、他の仲間たちの自宅へと向かう。
職を失い、路頭に迷うことへの恐れ。仲間から見捨てられてしまうことの絶望感。それは観ている者誰もが共通して理解できる、辛く苦しい感情だ。
昔、失業によって精神のバランスを崩した男が、猛暑の中ひどすぎる渋滞によるストレスや理不尽な差別を受けることでキレてしまい、暴走していく様を描いた映画(「フォーリング・ダウン」)という作品があったが、不景気の中で仕事を失うことは、生きる力を奪われることだし、誰からも救いの手を得られないことへの恐怖は、どんな人にも耐え難い者であることは間違いがないのだ。
救いのない環境に苦しむヒロイン
サンドラは苦しみながらも16人の従業員全員に会うことに成功する。
そして、結果として、彼女は8名の仲間から、彼女の復職への投票を勝ち取るが、それは過半数ではない。果たして彼女は復職を勝ち取ることができるのか。それとも??
サンドラは生活のため、なんとしても仕事を失うわけにはいかない。が、同時に自分が職に戻ることで、仲間たちにはボーナスを諦めさせなければならない。長く仕事を休んでしまったのは自分の責任だし、そのために仲間に迷惑をかけてしまったことも事実だ。
それなのに、彼らにボーナスをフイにさせていいのか?仮に復職ができたとしても、それは自分のエゴであり、仲間たちからの冷たい視線にさらされながら働くことになるのではないか?
どちらに転んでも、再び強いストレスにさらされそうな状況に、サンドラの心は耐えきれるのか?前述したように、とても淡々としたストーリー展開の中で、サンドラを追い込む重苦しい想いは我々の心にも感染していく・・・。
あなたならどうする?
どんな人でも、行き場がなくなるということはつらいことだ。
そして、仕事を失うことは、生活の糧を失うと同時に、それまで自分が生きてきたコミュニティから追い出されることでもある。
もしみなさんがサンドラの仕事仲間だとしたら、少ない賃金で生きる日々でボーナスを諦めて、サンドラに小さな希望を分け与えることができるだろうか?
ボーナス?友情?どちらをとりますか?