リドリー・スコット監督の衝撃的なミステリー映画。
重い障害を負って1日しか記憶を維持できない女が主人公。同じような設定としては『メメント』があるが、メメントの主人公が妻を殺した相手への復讐という、自身の内面的な「意志」に動かされるのに対して、彼女は他者から告げられる「情報」によって、さらに不可思議な謎へと導かれていく・・・。
重い障害を負って1日しか記憶を維持できない女が主人公。同じような設定としては『メメント』があるが、メメントの主人公が妻を殺した相手への復讐という、自身の内面的な「意志」に動かされるのに対して、彼女は他者から告げられる「情報」によって、さらに不可思議な謎へと導かれていく・・・。
”覚えていない”という苦しみに追い込まれていくヒロインと、深まっていく謎
10年前に何者かによって受けた暴行が原因で、記憶を1日しか維持できない障害を負ったクリスティーン。彼女は毎朝起きると、見知らぬ男とベッドを共にしている自分を発見する。男の名前はベン、彼女の夫だというが、もちろん覚えていない。繰り返される”見知らぬ男”との出会いと、信じられない自分自身の身の上話・・。
あまりの衝撃に混乱するクリスティーンだったが、ある日ナッシュという医師から電話を受け、さらに驚くべき話を聞く。彼女は数週間前からナッシュの治療を受けており、クローゼットに隠したデジタルカメラで毎日ビデオ日記を撮っているというのだ。
果たしてそこにはカメラがあり、彼女自身の記録が残っていた・・・。
ベンは、献身的にクリスティーンを護ってきた、と言う。しかし、ナッシュ医師の話との食い違いに気づくにつれ、クリスティーンは彼のことを信じることができなくなる。
果たして、クリスティーンに重傷を負わせたのはいったい誰なのか。
後味は決して悪くない、上質のサイコサスペンス
本作は非常に緻密に練られたサイコサスペンスだ。
そして、途中はこの上ない悪夢のままで終わるバッドエンディングではないかとヒヤヒヤしたが、そうではなく、誰もが納得できる決着がつくので、ぜひ安心してみて欲しいと思う。
記憶を維持できないことで、恐怖の体験をすることになる主人公クリスティーンへの感情移入、そして誰が本当の味方で、そして誰が悪意を抱いているのか、とにかく疑心暗鬼で二転三転するストーリー。質の良いプロットを抑えた演出で描き切った腕前は、さすがはリドリー・スコット監督、というべきだろう。