「The eventually found」ーRIDE 76より
1987年生まれの愛車<BMW R100RS>に跨り、ロングツーリングに出かけている一人の男性。十代からバイクに乗りはじめた彼は、少し無茶をしたり、事故ってしまったり、周囲に反対される事もあったが、今もなおバイクに乗り続けている。
酸いも甘いも嚙み分けた"大人"である彼は、旅の仕方もまた大人である。派手にとばすことはなく、時に旅先で出会ったバイクたちと挨拶を交わし、夜は現地で知り合った家族と共にバーベキューをしたり。十分に余裕もあるので、若い頃には宿泊できなかったであろう立派なホテルでゆっくりと体を休めることも。
良いことや悪いこと、今までの自分に想いを馳せながら旅を続ける彼は、旅の途中「自分の生きた道はこれで良かったのだろうか」と自分に問うような振る舞いを見せたが、最後には「何が得られるのかわからないが、走りきった時に自分の中で何かが変わっている。それは人それぞれでいい。私はこれで良かったんだ」と颯爽としていた。
そして、暮れていく夕日を見つめながら、「まだまだ遠く走ってみよう」と、嚙みしめる。
旅するオートバイ、R100RS
国産スポーツがレーサーレプリカへの道を歩みはじめた時、すでに水冷直列エンジンのKシリーズを発売していたBMWは、あえて一歩後退し、生産を終了するはずだった空冷フラットツインを再びメインストリームに据えてみせた。
4気筒のヒュン、ではなく、アクセルひとふかしでぶるーん、と身を震わせるフラットツイン。けれどエンジンのフィーリングはいかにも軽く、こつん、と美しく入ったシフトフィーリングとともに、その走りはとにかく軽快なもので、この良さに気づいているであろうこの物語の主人公はカッコイイ"大人"だなあと思う。
そして『RIDE76』では、BMWの歴史を振り返りながら、その魅力に迫っている。独創と伝統のボクサーツインの歩みから生まれた熟成と進化を、ぜひ『RIDE76』で感じて欲しい。
|文:山田純・中村浩史
|写真:松川忍