量産車世界最高速競争の激化。そんな時代に生まれたオートバイの中で唯一、生き残ったのは 隼のみ !その魅力は恐るべき速さや、類い稀なドライバビリティだけでは到底、説明がつきません。 この連載では、モーターマガジン社全面協力の元、同社出版誌である【GOGGLE】より、“隼”が現代まで生き残った本当の理由を紹介をしていきます!(文/北岡博樹 取材協力/スズキ デジタル編集/ロレンス編集部)

2018年3月18日追記:2016年3月9日に公開されたコンテンツを一部修正しました。

魔法が掛かっているとしか思えない隼のライディング。

第1回第2回のハヤブサ物語より、隼のパフォーマンスの良さは十分伝わったのではないでしょうか?
第3回はいよいよ本題。隼の本当の価値は、“車体側”にこそ潜んでいます。『乗れば乗るほど謎が深まる隼の走り』という異次元の世界を感じていきましょう。

隼を知らないライダーにとっては、依然として隼は300km/hモンスターマシンのままで、現行モデルに至っては最高出力200馬力。そんな超絶オートバイが普通になんて乗れる訳がない、と乗る前からビビってしまう。でもこれは無理もないこと。ボクだって乗ったことがなければ、間違いなくビビる側だったと思う。

でも、元ビビる側だったからこそ、ひとつひとつをきちんと伝えておきたい。隼は誰が乗っても、絶対に怖くない。それこそ大型免許取り立てのライダーだって、なんの抵抗もなく乗れるオートバイだ。

迫力のサイズはオーナーの所有感を満たすだけでなく、オートバイを詳しく知らない人からも声を掛けられる。そして隼は、どんなライダーからも一目置かれる存在。パフォーマンスだけが隼の魅力ではないのです。160万9200円。

不安定になりがちな低速走行。ましてや大型バイクであるならば、ライダーたちはなおさら不安がよぎることでしょう。
しかし、そこを感じさせないのが隼。なぜなら、隼には安定感を生み出すことが追求された上、計算尽くされた機能が十分備わっているのだから。乗り出した直後から、優しい乗り心地と滑らかさを体感することができるのです。

ライダーを包み、走りに自信を与えてくれる隼

普通にクラッチをつなげば、車重が消えてフワリと浮くように前に進み出す。いきなりドカンと発進するようなことはなく、じんわりと優しく動き出すのだ。そして足を地面から離してステップに両足を乗せた時、誰もが最初の感動を知ることになる。

例えば、恐る恐る、ゆっくり走っているような状態。オートバイが不安定なはずの低速走行時なのに、隼はどっしりと小揺るぎもしない。経験したことがない絶大な安定感は、ライダーに自信を与えてくれる。よし大丈夫、これなら乗れる。きっとそう思えるに違いない。
そしてスロットルオン。最初は怖いから、じんわりと。そうすると隼は滑るように速度を上げていく。本当に、滑るように、としか表現できない。荒々しさなんて一切ないのだ。

これは慣れてきて、大きくスロットルを開けても同じこと。低速走行時に感じた鋼鉄の安心感に支えられたまま、スピードだけがのっていく。 速度に対する緊張感のバランスがおかしく感じる。高速道路の100km /hが、60km/h程度で流しているような錯覚を覚えるのだ。そして、コーナーに差し掛かったとき、その次の感動が待っている。見るからに持て余しそうだったデカい車体が、どんどん深くバンクしていく。

バイクを寝かせていくときに、 安心感しか感じない。コーナーからの立ち上がりで加速状態に写ってもそれは変わらないまま。前輪と後輪が、どっしりと路面を捉えている安心感にライダーは包まれる。高剛性のフレーム、しなやかな足周り、上質で極太のトルクフィーリングが生む乗りやすさ。言うのは簡単だけど、そんな説明じゃ全然足りない。

まるで“魔法にかかってるんじゃないか?”と感じさせ、夢のような時間と満足感をくれるオートバイ。本当に良いエンジン、本当に良い車体。傑作とは、時に人の理解を超えて、感動を生み出すものなのです。

【伝説のオートバイ SUZUKIハヤブサ物語】 第1回:世界に誇る日本の生ける伝説バイクになれた理由。@GOGGLE
【伝説のオートバイ SUZUKIハヤブサ物語】 第2回:うわべではない、 芯から滲み出る「美」 !@GOGGLE