そして、人間って、一直線に目標や野望の実現に向けて加速できる人と、あれこれ考えてエンストしちゃったり、まっすぐ走れなかったりする人に分かれるものなんですよね。
オートバイをメインとするのではなく、オートバイと関わる主人公の心模様を追う佳作
本作「モーティヴ - 原動機〜リフュールド〜」は、わりと地味なオートバイ漫画です。
爽快な走りとか、派手なバトルのようなシーンはありません。
主人公は基本的に二人で、書店で働く元レーシングライダーのミチタが、レーサーとして再始動する話と、兄の早逝とそれによる両親との不仲をトラウマとして抱える高校生 ナギの、不器用な青春を描いています。
ともにオートバイと関わることで精神のバランスをとっている、とても繊細で、物事を真剣に考えすぎてしまうきらいのある、ちょっと暗めな性格です(苦笑)。
車は我々の体の外側にあるけれど、オートバイはぼくたちの体の内側にある。
オートバイを題材にした漫画だと、たいていはあまり考え込むことなく、スカッとした明るい性格の主人公が多いですが、本作は真逆。じくじく、ウジウジと思い悩むことが多い、不完全燃焼したときのマフラーみたいにブスブスいっています。
でも、人生って、意外にそんな感じですよね?
(明るさが取り柄の)トーマスだって、時には落ち込むし、不意のエンストで立ち止まることだってあります。いえ、だれだってそうですよね??
オートバイというシンプルだけど奥深い乗り物は、ときとして、機械の中の神サマの存在を意識してしまうこと、ぼくにもあります。
車は我々の体を包む、というか、外側にあるけれど、オートバイはぼくたちの体の内側にあります。だからこそ、単なる機械ではなくて、なにか特別な存在に感じてしまうんだと思うのですが、オートバイと同じように ぼくたちの胸の中には、心というエンジンがあって、そのエンジンはいつもいつも好調ってわけにはいかなくて、ときとして止まりかけたり、調子を落としたりしちゃいます。
それでも周りのたくさんの友達や家族や恋人から”愛情”とか”思いやり”のような優しい気持ちをもらって、それを燃料にして、また走れるようになるんです。
本作は、そういうぼくたちの弱さと強さ、そして生きていくということを、オートバイとの関わり方を通じて表現している、とっても”優しい”作品です。