【第二世代GT- Rの黎明]
「再び神話を創れるか」平成元年...1989年6月1日に発行されたモーターマガジン誌は、 復活した「GT-R」の大特集をこんなキャッチでスタートしている。 その革新的ハードウエアは、理論上のスペックだけでも十分に衝撃的だった。やがてその衝撃は現実体験となるのだが... 創り出された神話は、想像を遙かに超えていた。
この連載では、モーターマガジン社全面協力の元、同社出版誌である【名車の記憶】より日産スカイラインGT-R の歴史を振り返り、紹介をしていきます!

第二幕はここから始まった!

従来のモデルとは比較にならないほどのスピード速度でサーキットやアウトバーンなどを走行できる動力性能を持つGT-R。生まれ持った レーシングマシン である第二世代GT-R BNR32(1989年5月22日、8代目スカイライン発表)はこうしてはじまった!

誰も見たことのない地平へ (名車の記憶 日産スカイラインGT-R I@モーターマガジン社)

スカイラインGT‐Rは、闘うクルマだ。そしてそれは、 今度のコンセプトを明快に表わす、象徴的な存在であるということでもある。ことわるまでもなく、車名の末尾に付記された〝R〞はRACING 意味している。企画の段階からレーシングフィールドを意識し、そこで勝つことを唯一最大の目的としてきたことが、そこから読み取れる。このような開発スタイルは、たとえばフォードのシエラ・コスワース、 BMWのM3、メルセデスの190 E 2・3(2・5) などにも見 られるが、スカイラインGT‐Rの 場合は、それらとちょっと分けて語 られるべきだろう。なぜなら、GT‐Rがいわゆるエボリューションモ デルでなく、一連のR型スカイラインシリーズの開発当初から、同時進行のかたちで存在していたからである。ある特定のレーシング・カテゴリーに的を絞り、そのレギュレーショ ンの範囲内で最良、最強となる基本スペックを用意する。それは、日の目を見ることなく消滅してしまったグループBレースを目指して開発されたポルシェ959やフェラーリ2 88GTOと同じスタンスといえるかも知れない。 (文◎伏木悦郎)

GT‐Rの凄さは、現在のグループAレギュレーションに照らしながら、徹底した論理の構築をなっているところにある。なによりも大切なエンジン は2・6ℓにスケールアップされ、ツインターボを与えている。排気量は最低重量規定とのバランスから検討され、ツインターボの採用はそのキャパシティでの最大効率が考えられた結果だ。これによりノーマルで280psフルチューンでは600ps近い強烈パワーを、GT‐Rは与えられている。 (文◎伏木悦郎)

クルマにとって速さは、抗うことのない魅力である。そしてそれのもつ意味は、本気の挑戦なしには理解しがたいものである。世界的視野に立って速さに挑む。GT‐Rの凄さの本質がそこにある。 それは日本車がはじめて入り込む、 新たな地平なのだから。 (文◎伏木悦郎)