タイヤ交換を簡単にしたり、簡素化のために懸架装置を「片持ち」方式にする2輪車は結構多いですね。例えば、ベスパをはじめとする各種スクーター、エルフ・モトやそのパテントを使ったホンダのプロアーム採用モデル、ドゥカティ916、ジレラCX・・・世界ロードレースGP用のWP製片持ちフロントフォークなんてモノもありましたね・・・。

戦後間もない時代にドイツで生まれたインメ。

こちらに紹介するインメR100は、第二次大戦後間もない時代に生まれた前後片持ち方式のモデルです。ジェット機のスターター用2ストロークエンジンを戦中に開発していたエンジニア、ノルベルト・フリーデルは、戦後モーターサイクル造りの世界に転向することになりました。

インメR100のイラスト。フレームのメインチューブとフォークは、同じサイズのパイプを用いています。当時のドイツは極度の物資不足だったので、同じ材料でフォークとフレームを作ったワケです。

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前後片持ち方式の車体もユニークですが、インメR100は搭載する2ストロークの構造もユニークでした。シリンダーとシリンダーヘッドは一体成型となっており、これは部品点数を減らし構造を簡素化するための工夫でした。なお排気量は99ccで、最高出力は4.5馬力です。

エキゾーストパイプがスイングアームを兼ねており、後輪を支えています。ゆえに卵形のエンジンは、後輪の上下動によってシーソーのように上下動するのです。

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約12,000台作られるも、生き残りはわずか・・・。

前後のホイールは同じものを使っており、入れ替えが可能です。安価なコミューターモデルながら、前後にサスペンション機構を与えていたのはインメR100の特筆すべき特徴と言えるでしょう。ギアボックスはハンドチェンジの3速を備えていました。

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その可愛らしい燃料タンクのエンブレムからもわかるように、インメとはドイツ語で蜂を意味します。インメ同様航空機畑のピアッジオやMVアグスタが、戦後の黎明期の彼らの作品にベスパ(イタリア語の蜂)という名前をつけたように、2ストロークサウンドが蜂の羽ばたき音のように聞こえる連想からのネーミングなのでしょうかね? そのスタリングも蜂っぽくて、その形からの連想にも思えます。

1948年から1950年の間、インメR100は12,000台が生産されたと言われてます(諸説あり)。しかし、高級スポーツ車と違って実用第一のコミューターモデルは使い捨てされがちなのは世の常で、現在生き残ったインメR100はドイツ国内で20台以下、と極めてわずかです。

敗戦からの復興期に生まれたドイツ車の名を上げる時、究極の簡素化で作られたインメR100は、欠かせない存在と言えるでしょう。

IMME R100 seen running at WEST KENT SHOW

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