『サムライダー』は、『ヤングマガジン海賊版』(講談社)1987年8月号に第1話を掲載。同年10月号に第2話を掲載した後に、同社の『週刊ヤングマガジン』に移籍し、1987年第22号から1989年第4号まで連載。連載時は「お笑いバイクアクション」と銘打たれていた。単行本は全3巻。 - Wikipedia

あらすじ

すぎむらしんいち先生のデビュー作『サムライダー』。
サムライ、それも江戸時代的な武士ではなく、戦国時代を思わせる甲冑型バトルスーツと兜型のヘルメットに身を包んだバイク乗りが、日本刀を仕込んだカスタムカタナで爆走。
目的が何かはわかりませんが、暴走族との過激な抗争を引き起こしていきます。

主人公といえるのは高校生の森昌雄(マサオ)。買ったばかりのバイクをサムライダーのおかげで廃車にされてしまいます。その翌日、彼のクラスにやってきた転校生 沢村こそがサムライダーの正体と見破るマサオでしたが、彼の言うことを誰も信じようとはしません。

その後、サムライダーを追う暴走族グループたちの矛先になってしまうマサオたちは、沢村への対抗意識も手伝って、サムライダーのクローンのような格好をした暴走グループ「サムライダース」を結成して、暴走族たちに立ち向かおうとする・・・・。

©すぎむらしんいち先生&講談社

学園版マッドマックス?

あらすじを書いてはみましたが、結局のところ、本作に明確な筋書きはありません。
ただマッドマックスのような世界観を、日本の十代の不良少年たちに置き換えて、ドタバタ劇に仕上げただけだと言えます。サムライダーとなって暴れまわる沢村の目的はまったくわかりませんし、大義名分もありません。

マサオのバイクのブレーキホースを日本刀で切断するサムライダー

不可思議なコスプレをして暴れるサムライダーは、常人離れしたバイクテクニックと凄まじい喧嘩強さを発揮するのですが、悪人との戦いを正当化することはありません。正義感のないバットマンのようなものです。

しかし、悪役となる暴走族たち(謎のヘルメット軍団と、暴走チーム”津血乃呼”=つちのこ )は、割と典型的な悪人たちで、街中で大暴れしたり女性に乱暴したりするので、サムライダーが彼らを相手に大暴れをすれば、そこにカタルシスを感じることができます。

その意味で、本作は細かいことを考えずに、サムライダーの無敵の傍若無人ぶりを楽しめばいい、そう思います。

サムライダーと対峙する謎のバイキング? 彼の存在も、なんの説明もなくわけがわかりませんw

はじめにカタナ、ありき。

『サムライダー』は冒頭のようにマッドマックスが大好きなすぎむら先生が、カタナというバイクへのリスペクトを形にした作品です。
カタナが先にあって、そこからサムライ、ライダー、サムライダーと連想されたとのことです。

強引な設定と展開。それが一体なんでしょう。人馬一体、鉄の馬とバイク乗りをサムライに見たてて、黒澤明映画や西部劇、そしてもちろんマッドマックスのような退廃的で刹那的で暴力的な世界観を若さに任せて描きなぐった、荒々しい作品。バイク乗り=アウトローという一つの見方を象徴的に仕上げたエンターテインメント。

これを楽しむことができれば、ぼくたちは永遠の不良少年でいられるってもんです。ね!