熱い思いを振り絞って、心から愛して、命を張って守りたい女。俺だけのマリアを探して幸せにするんだ。そんな単純な目標に生きる男、星野鉄馬(鉄馬と書いてケンタと読む)。
バイクとボクシング(とセックス)に賭けた青春を描いた傑作。

万歳ハイウェイ」の作画で知られる守村大先生が、ピンで書き下ろした熱〜い男の青春物語。それが「あいしてる」です。
主人公 星野鉄馬(ほしのけんた)の出生エピソードから、大人になるまでの半生を描いた長編マンガなのです。バイク好きで知られる守村先生だけに、本作はバイク漫画とは言い難いですが、バイクをこよなく愛するキャラクターたちが大暴れする、痛快無比な作品なのです。

©守村大先生&講談社

女にゃ優しい不良少年時代

主人公 星野鉄馬(以下、ケンタ)の父親 星野鉄兵は、バイクを乗らせたら誰にも負けないテクの持ち主。夜な夜なバイクで走り回っていたのですが、あるとき 売春婦なのに在留米兵たちの間でカリスマ的な人気を誇る女性 マリアに出会い、あろうことか死ぬほど惚れてしまいます。

二人は運命に導かれるように結婚し、マリアは懐妊するのですが、ケンタを元気に産み落とす代償のように命を落とします。残された鉄兵は、マリアへの愛に殉じて 強い父親としてケンタを一人育てるのです。

鉄兵はおでん屋台をひっぱりながらケンタを育てますが、あるときヤクザとのいざこざに巻き込まれて肺に重傷を負ったことことをきっかけに、故郷である横浜に戻ってバイク屋を開業します。

バイク屋を開業する父・鉄兵

ケンタは母親のいない寂しさを感じはしますが、力強く成長します。それは誰よりも強くて優しい父親の愛情を思い切り受けていることと、大好きな父親のように自分だけのマリア(生涯賭けて守りたい恋人)を探すことを何よりも心の支えにしているからです。
彼は女の子を守るためならいつだってカラダを張るという心意気を、そのDNAに刻んで生まれてきたのです。

幼いときから女の子を守る。気合いじゃ負けね。

やがて成長したケンタは、いい感じにツッパリ(死語w)になって、喧嘩とバイク中心の日々を送ります。優等生とは絶対言えない、どっからどうみても不良少年のケンタですが、幼い頃から刻み込まれた好きな女の子のためなら死んだっていいという漢気は健在。それゆえに、さまざまな女性と関係を持つのです。

マッハを愛車とする高校生時代

ボクサー時代

ケンタはちょっとバカなので(笑)、あまり避妊しません。
必然的に、やったらやっただけ子供ができます。ほぼ同時に三人の女の子が身ごもってしまうのですが、ケンタは誰か一人を自分のマリアとして選ぶことができません・・・。やがて彼女たちはケンタを愛しつつも、自立を目指して去っていきます。
彼女たちが去っていくのは自分に甲斐性がないからだと痛切に自覚するケンタは、なにかで身を立てることを決意。運命のいたずらで、彼はボクサーへの道を選ぶのです。

天才的なセンスを見せるケンタ

センスだけでなくガッツでも一流のきらめき

ただ、残念ながら彼は世界挑戦まではいくものの、チャンピオンには惜敗。
そのまま網膜剥離によって引退を余儀なくされるのです。

しかも悲劇的なことに、世界戦のダメージが残っていたのか、彼はバイクの運転中に昏睡状態に陥り、十数年眠りこけてしまうのです・・・。

バイクにまたがったまま、昏睡状態に陥るケンタ

ガキオヤジ時代

ケンタが目覚めたのは、眠りについてから十数年経ってからのことでした。
ケンタにしてみれば記憶はついさっきまでのこと。30代後半になっているという自覚はなく、まだ十代の気分なのです。

ここからケンタの第二次青春時代が始まります。周囲からはガキオヤジと呼ばれながら、やんちゃな生活が始まるのです。

実はあなたもケンタでしょ?w

本作は、誰よりも強くて一途な父親と、命をかけて自分を産んでくれた母親へのリスペクトを胸に、一生懸命生きる若者の物語です。
いい加減にみえなくもないですが、彼は自己実現と愛するマリアとの出会いを目指して必死に生きているのです。

彼には三人の子供(男二人、女一人)がいます。
女の子は鉄兵の元でバイク屋になります。男の子は長じて一人はボクサーに、もう一人はレーシングライダーを志すのです。

そしてケンタはいまだ父親としての自覚がまだ十分にできていないながらも、”男”として、息子や娘が超えるべき大きな壁になろうとするのです。

とはいえ、気分は十代のままなので、自分自身の身の振り方も若干ブレていて、どうやって生きていこうか迷ったままなのですがw

もっとも、ロレンスをお読みのみなさんは、意外にリアルケンタみたいなものかもしれません。バイク好き、車好き、女好き?なままで、いくつになっても16歳の気分が抜け切れていないのかも。

どうです??そんな感じじゃありません??w
否定できないでしょ?