トーマス大好きなKindleで、またもバイク(関連)漫画の大作を読破!
名作『湘南爆走族』で有名な吉田聡先生が描く、もう一つの暴走族テーマの激アツストーリーです。

『荒くれKNIGHT』(あらくれないと)は、吉田聡による日本の漫画である。1995年から2005年まで『ヤングキング』(少年画報社刊)にて、2006年1月16日号から同年12月26日号まで『月刊荒くれKNIGHTマガジン』にて連載され、OVAとしてアニメ化、映画・オリジナルビデオとして実写化もされた。
「BIKEPACK‐輪蛇」の3代目リーダー・善波七五十を中心とした青少年達の青春を描いた群像劇である。神奈川県の湘南海岸近辺、および周辺地域を舞台とし、登場人物たちはいわゆる暴走族・ヤンキーが主となっているが、主人公の「善波七五十」率いる『輪蛇』は周囲から既存の暴走族とは一線を画した存在と目され、伝説の存在として扱われている。

喧嘩と走りに明け暮れた少年たちの群像

『荒くれKNIGHT』。
いわゆる暴走族を主人公に据えた、不良少年・アウトロー漫画です。バイクは必須アイテムですが、「あいつとララバイ」や「バリバリ伝説」などとは違って、それほど重要視されているわけでもありません。

むしろ最重要視されているのは、彼らが所属するチームそのもの。もしくはその象徴たる分厚い革のダブルのライダース(背中にチームのエンブレムである蛇が絡みつく十字架)なんです。

彼らが所属するチームの名前は 輪蛇(リンダ)

可愛らしい名前ですが、湘南エリアでは口にするだけでも不良たちが身震いしてしまうほど、恐怖と畏敬の対象となっている伝説のチームなんです。そして、その三代目リーダーであり、最強の不良として恐れられるのが主人公善波七五十(ぜんばないと)。その名前には、本作のタイトルであるKNIGHT(ナイト=騎士)が掛けられていると同時に、彼の愛車ZIIの排気量750ccを暗喩しています。

本作は、1995年から2005年の10年間の連載です。
つまり、オートバイ全盛期から、衰退期にさしかかる期間の連載です。輪蛇のメンバーたちも、善波のZIIを筆頭に、MVアグスタやBMWなど、バラエティに富む名車に乗っていますが、徐々にゼファーなどの当時のオートバイ小僧後用達のバイクたちも登場し始めるのです。

だから、初期の暴走族の熱気全開モードから、徐々に後半はオートバイとか走りにはあまり重きをおかない展開になっています。また、善波は最初から最後までZII(ゼッツー)に乗っているものの、彼のライバルとして位置付けられる対立チーム 虎武羅(こぶら)の三代目リーダー伊武 恋二郎は、最初は善波と同じZIIだったのに、後半ではなんとYAMAHAのT-MAXに乗り換えています・・・(これ、結構衝撃)

しかも、もう一人の主人公である、善波に心酔して輪蛇入りを許される(おそらく四代目リーダーになる)春間 勇樹(通称ハルマ)にいたっては、中型免許をとった直後こそCB400に乗っていましたが、後半では中古のマジェスティに乗り換える始末。
まあ、当時はオートバイ人気が完全に下火になってきて、ビッグスクーターブームに突入していましたから、やむをえないかもしれません。

©吉田聡先生・秋田書店

蛇が巻きつく十字架を背負う男たち

輪蛇(リンダ)の三代目リーダーの善波七五十(ぜんばないと・左)と腹心の牧。

ヘビーなエピソードと、おふざけ全開なコミカル展開が織り混ざる作品

本作は、吉田先生らしく、ハードで熱い男たちの戦いや、それでも傷つきやすい、十代特有の繊細な彼らのハートを優しく描く本道のストーリーと、コミカルなおふざけが、ブレンドされて展開します。

個々の少年たちは札付きのワルですが、悪人ではない。口より拳が先に出てしまう荒くれ者ばかりですが、心の中は熱く優しいのです。

彼らを荒くれた騎士としてとらえ、一人一人の過去や胸のうちの葛藤などのエピソードを展開しつつ、物語は進みます。全体として一環としたストーリーはないと言っていいと思います。
後半、善波(彼は一度高校をやめて、若くして結婚、一児のパパなのです)が高校に復学したり、それぞれのメンバーが、社会復帰することで輪蛇を離れていきそうになり、ハルマたちに代替わりして終わるようなムードになるものの、結局は明確なエンディングがないままに終わっていきます。

でも、それでいいのかもしれません。

本作は、輪蛇という居場所にしがみつくも、未来を考えざるをえない若者たちの儚くも激しい青春物語です。終わりとか、整然とした展開などを求める方が、大人の悪いところ、と思うべきかもしれないのです。

本作の後編というか外伝である、「荒くれKNIGHT 黒い残響 完結編」のレビューもお楽しみに!
(輪蛇や、ライバルチーム虎武羅の始まりのエピソードや由縁は、そのときにまとめます!)