第44回 東京モーターショー 2015。クルマやバイクの未来を垣間みれる夢の祭典だ。実は以前、東京モーターショーを見たのは、私が高校生だった時でまさにバイクブームまっただ中。メーカー各社のバイクブースも大盛況で、ホンダが名車となったCBX400を発表した年だったように記憶している。あれからざっと34年。現代の東京モーターショーは何を伝えてくれるのだろうか。

まずは、ホンダでしょう。ホンダのブースで目を引いたのは「スポーツハイブリッド三輪 NEOWING」。水平対向4気筒エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドシステムを採用している。ヤマハのトリシティを代表として、近年は前輪2輪のシティコミューターが注目されているが、この流れはスポーツバイクへも波及してゆくのだろうか。

これは私がずっと大切に保管している雑誌で、モーターマガジン社から1985年に発行された「オートバイ11月号臨時増刊号 1985年モーターショー特集」の24ページだ。特集では「1990年型モデルを予想する」として、漫画家やバイクのプロダクトデザイナーたちによるイラストを掲載していた。

この3輪バイクを描いたのは、今をときめく漫画「キリン」の作者である東本昌平先生によるものだ。この当時は、バイクが3輪になるなんて想像もできなかったが、東本先生は1985年にすでに予想していたのか。これは後輪2輪だったが、車輪がリーンするという発想は現代の3輪バイクと同じなのに驚かされる。ちなみに東本先生の上に掲載されたのは、当時学生だった私が描いたものだ。あらためて見ると稚拙で恥ずかしい限りですよ。

ホンダのニューモデルで注目なのは、意外とこの「アフリカツイン」ではないだろうか。日本にくらべて、欧州ではアドベンチャーの人気が高い。欧州メーカー各社はアドベンチャーモデルに力を入れているし、その代表格となるBMW R 1200 GSは日本でも人気モデルのひとつだ。この分野でパイオニアであるホンダは、このアフリカツインを満を持するかのように準備してきた。いよいよリリースされるのも目の前だ。

そのアフリカツインとファクトリー・アドベンチャー・レーサーである「CRF 450 RALLY」のコクピット比較。市販車とレーサーという大きな違いはあるが、どちらもこれに乗るライダーが冒険をコンプリートするための装備であることは変わらない。なんとも夢を感じるコクピットではないだろうか。

現代のアドベンチャーラリーの最高峰である、ダカールラリーにチャレンジしている「CRF 450 RALLY」。いまは南米を舞台に移したが、アフリカのサハラ砂漠を走っていた頃に較べると、マシンはずいぶんスリムで洗練されたものになっている。ダカールラリーではこのところKTMに後塵を拝しているが、アフリカツインがリリースされるタイミングの2016年大会では、本領を発揮してくれることを期待したい。

現代のスーパースポーツマシンがどんどん高性能となってゆき、レーサーそのものといっても過言ではない現代。ロードゴーイングレーサーとはすでに過去の言葉となってしまったようだが、この「RC213V-S」は公道を走ることのできる唯一のレーサーといってもいいだろう。ホンダはかつて1992年にNRという、グランプリレーサーのテクノロジーを満載したマシンを発売したことがある。こんなところがホンダの矜持となっているんだろうね。

ここまでホンダブースを見てきたが、ひときわ光り輝いていたのがスーパーカブのブースだった。1958年に誕生したスーパーカブはそろそろ60周年を迎えようとしている。世界で最も多く生産され、日常の足として最も多く使われてきたであろうスパーカブも、いよいよ電気バイクとして新しい時代に向けて、生まれ変わろうとしているようだ。考えてみればスーパーカブほど、電気バイクが似合うマシンはないかもしれない。そういう意味では現代のホンダのバイクブースでは、この電気スーパーカブが最大の目玉だったのかもしれないね。