皆さんはこの表題の言葉を聞いたことがありますか? 1980年代〜1990年代に熱心な日本の2輪専門誌の読者だった人ならば、この言葉を聞いたことが1、2度はあるのでは? と思います。意訳すると、「モーターサイクルが男を作る」。つまり、モーターサイクルに乗ることによって、一人前の男になるのだ・・・みたいなカンジですね。これはモーターサイクル文化先進国、英国の諺として紹介されることが多いです。

「この言葉って、本当に英国の諺なんですか?」

こんな質問を友人の一人からされたのは、数年前のことでした。なんでも彼は、この言葉のことをアレコレインターネットで調べたのですが、どうもソースとなる文献などにたどり着けない・・・というのです。

私はなんでもモーターサイクルのことなら知っている人(もしくは、知ったかぶりをする人)として認識されているようで、この手の問い合わせをよくされます。普段は冷たく「ネットで検索したら?」とあしらうのですが、散々ネットを調べた友人にいつものフレーズを使うのもナンですので、私も私なりに、私の独自ルート(嘘)を使ってこの言葉のルーツを調べてみました。

こちらはビンセントのシリーズA単気筒。こういうモデルならば、確かに少年を"男"にしてくれそうです?(*単なるイメージ画像です)

www.jugjunky.com

とりあえず私の友人の、数名の英国人ジャーナリストに聞いてみました。答えはシンプルに「知らない」でした。さて・・・八方塞がりなので(早っ!)、"motorcycle makes a man"をGoogleの検索窓に放り込んで、リターンキーをプレス(安易すぎないか??)。出てきた検索結果は、そのほとんど・・・というか1件以外は全て日本語のウェブサイトでした。

キャッチーで、優れたコピー

それら日本語サイトの幾つかを見てみると、やはり英国の諺・・・みたいな枕に続いて、このフレーズが紹介されていました。う〜ん、どういうことなんだろう・・・? ひとまず、motorcycleは置いておいて、makes a man という部分に注目することにします。この部分は、割と他のフレーズでも聞いたことがあるので、ここだけ注目して調べれば、何かヒントが得られると思ったのです。

結論から言えば、真相にはたどり着けませんでしたが、何となく自分なりの回答は得ることができました(と思いこんでいる)。おそらくMotorcycle makes a manの雛形は、名言・格言王との呼び声も高い? マーク・トウェインの名言の一つではないでしょうか?

Clothes make the man. Naked people have little or no influence on society.
- Mark Twain (マーク・トウェイン) -
洋服が人間をつくる。裸の人間は社会にほとんど、あるいはまったく影響力をもたない。

アメリカ生まれの「トム・ソーヤの冒険」の作者として知られるマーク・トウェインですが、上に引用した言葉の前半分を拝借して、アレンジしたのがMotorcycle makes a man・・・なのかもしれません。もっともオリジナルの方は実に皮肉めいた言葉であり、アレンジ版が描いているような凛々しさとは無縁ですが・・・。

オフロードで大活躍した英国車、グリーブスでびょ〜んとジャンプする男。なるほど、確かにモーターサイクルは男を作るのかもしれません?(*単なるイメージ画像です)

cdn.silodrome.com

私も加齢とともに、非常に記憶力が悪くなっているのですが、確かMotorcycle makes a manというフレーズを盛んに日本の2輪専門誌で紹介したのは、故小野かつじさん(クラブマン編集長など)だったと思います。非常に美意識の高いクラシック愛好家で、氏が雑誌を通して表現するモーターサイクル観に魅了された人は多いでしょう。

小野さんが、これを英国の諺・格言として紹介したのかどうか・・・は申し訳ないことに私は覚えてないのですが、もしそうであるならば、それはテキトーな言葉の流布というよりは、優れたコピーライティングのセンスのあらわれ・・・のように思えるのです。

それを証拠に、今でも多くの日本人が、Motorcycle makes a manという言葉を好んで使い、この言葉が表現するポリシーに心を寄せているのが、先述の検索結果なのですから・・・。勝手なイメージですが、スコットランド国境の鄙びた町のパブで、古びれたBSA B33に乗った初老のライダーが、ホンダCBRに乗る若者ライダー相手に、こんなフレーズ言っていそうじゃないですか(笑)。

さて、友人には、「自分なりに調べたけど、わかんなかった、メンゴメンゴ」と言っておきました。「普段はエラソーにウンチクばかり話すクセに、大したことないヤローだな」というトーンを帯びた「ありがとう、時間遣わせてゴメンネ」という礼を述べ、友人は電話をガチャ切りしました。

小野さんがいない今、小野さんにこのことをお聞きして、真相を知るのは不可能なことです。ただ、この言葉には魅力がある・・・ということは確かなことで、それだけが明らかなら、それでいいじゃないか、とも思います。

あ、真相を知っている方は、ロレンス編集部までおしらせください(苦笑)。