『六三四の剣』『赤いペガサス』『JIN-仁-』などで知られる巨匠 村上もとか先生が描いた、バイクマンガの傑作。小学館の少年サンデーで1986年から1988年連載。

世界を目指すケイといえば錦織圭 ですが、 30年近く前に、世界を獲ったケイ がいました。
それが一文字慧。本作の主人公です!

村上もとか先生は、 とにかくライバル関係 を描くのが抜群に上手です。


本作では、モトクロスの世界チャンピオンを目指す若き主人公と、本場である米国で英才教育を受けた天才との激しいバトルを描くと同時に、主人公の才能を見出し、レースの世界へと導く兄貴分との師弟関係が徐々に越えるべき山として、やはりライバル関係へと変わっていくさまを描きます。

しかも村上先生は、ライバルたち非常に爽やかで魅力的に描くことで、単にぶつかり合う男同士の関係ではなく、互いに認め合うある種の友情までもきっちり表現してくれるので、もうのめり込まざるを得ないのです。

兄貴と慕う風祭和人、同年代の強敵ジェフ・アネモスとの強烈なライバル関係が魅力

モトクロス(MX)の草レースに明け暮れる中学三年生 一文字慧(ケイ)。
彼はあるとき、MX国際A級に昇格間近の天才レーサー風祭和人に出会い、プロライダーとして世界を目指すことを決意します。風祭はケイの兄貴分であり、憧憬の対象であると同時にいつか抜きたい、高い目標になるのです。

7つ年上の天才ライダー風祭との出会いがケイを変えていく。©小学館 少年サンデーコミックス

風祭の薫陶を受け、メキメキと腕をあげるケイでしたが、彼の前に、アメリカからやってきた同じ年齢の天才児ジェフ・アネモスが立ちふさがります。裕福な家に生まれ、英才教育を受けたジェフは最初こそケイの挑戦に余裕の表情でしたが、やがてケイの才能と闘志を理解し、自他共にライバルであると認め合うのです。

ハンサムで知的なライバル、ジェフ・アネモス。

しかも、普段の紳士的な物腰と裏腹に、ジェフはレースになればラフファイトも辞しません。
ジャンプ中に、ケイの頭を後輪で弾き飛ばすほど危険な走りを平然と行う非情さと喧嘩強さを見せるのです。

時として互いを叱咤激励し、切磋琢磨する最高のライバル同士となるケイとジェフ。

風祭の遺志を引き継ぎ世界を目指すケイ

やがて風祭とケイは国内では敵なしとなり、後楽園ホールで行われたスーパークロス(SX)で風祭が劇的な優勝を果たすことで、本場である米国にわたって、ついに世界を目指します。

臆さず米国人ファンたちを挑発する風祭。それがアメリカで成功する方法と知っていた

しかし、風祭は米国でのレース中に不慮の事故でこの世を去り、ケイは風祭のクルーを受け継ぐ形で一人世界チャンピオンを目指すようになるのです。

思いがけない不運に、悲壮な覚悟で立ち向かうケイ

世界中から集まる歴戦の強者を相手にして、ケイは勝ち星を重ね、やがて最終戦にその年の世界チャンピオンの座を狙える位置にたどり着きます。

しかし、彼の体は12度の骨折など、度重なる重傷のダメージが蓄積し、背中に致命的な損傷となって現れるのです・・・。

しかし、風祭の遺志を継ぎ、無念を果たすと共に、自らの夢を実現するため、ケイはドクターストップを振り切って出場を決意します。

WFO。ワイドフルオープン。全開で走るしかない。
果たしてケイは優勝できるのか??そして、彼のカラダはどうなるのか・・・・。

本作は、モトクロスを題材にした珍しいオートバイ漫画として、一世を風靡しました。
駆け抜ける青春、スピードを目指す若者たちの一途さ。作画の巧みさではずば抜けている先生だけに、今一度、車かオートバイを題材に作品を発表していただきたい、そう思います。