この連載は、年間100本の映画を観る、映画評論家ではない”僕”の個人的な (100本中1本の)映画評である。

2005年の『シン・シティ』の続編

太陽も朽ち果て、闇に抱かれたこの街に、男たちの荒んだ心を照らす一人の女神がいる。
場末のストリップバー“ケイディ”のダンサー、ナンシーだ。
だが、彼女のなかにも闇がある。愛するハーティガン刑事を死に追いやった街の支配者ロアーク上院議員を、必ず殺すという誓いだ。
心優しき野獣マーヴは、そんなナンシーを見守り続けていた。
ロアークは非道な手で、果てしない欲望を叶え、街は加速度的に腐敗。
稀代の悪女エヴァの台頭など、虫ケラのようにアウトサイダーたちは踏みつぶされていく。
そんな隆盛を誇るロアークに挑戦者が現れる。傲慢なギャンブラー、ジョニーだ。彼はポーカーで大勝ちするが、仕返しに黄金の指を叩き潰される。
一方、エヴァは、かつて恋人だった私立探偵のドワイトを大富豪の夫殺しに利用しようとしていた。
遂に、ならず者たちの怒りが頂点に達した。一匹狼として生き抜いてきた彼らが、燃えたぎる憎しみで共鳴した時、激烈な復讐がはじまる!

本作は前作同様4つのストーリーをつなげたオムニバス映画だ。一応前作のエピソードを引き継いでおり、メインのキャラクターもほぼ同じだ。

悪徳の街シン・シティ

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前作と同じく、基本的にアメコミのムードを生かしつつ、モノクロームの映像に必要に応じて、想像を掻き立てるための色が差し込まれる作りだ。

男を騙して思いの儘に動かす女たち

この映画に緻密なストーリー展開を期待してはいけない。
4つのストーリーも結びついているようで、実はあまり関係がない。

軸になっているのはジェシカ・アルバ演じるナンシーが、街の権力者によって命を失った恋人(ブルース・ウィルス)の仇をうつストーリーであり、それ以外は装飾的なエピソードにすぎない。しかし、サイドストーリーでありながら最も強烈な印象を残すのは、金のために男を騙す美女を演じるエヴァ・グリーンだ。

彼女はさまざまな作品でヌードを披露しているが、本作ではほぼ脱ぎっぱなしだw。30代半ばの彼女であるが、その美貌とプロポーションは実に艶めかしく、出会う男をすべて虜にしてしまうという設定も十分に説得力がある。
彼女はジョニー・デップと共演した『ダーク・シャドウ』でも、男を狂わす魔性の女(というか魔女そのもの)を演じていたが、その狂ったような瞳と熱っぽい微笑は、実に妖しく病的なほどに魅力的である。

そして、主人公といえるナンシー(ジェシカ・アルバ)もまた、出産を経たとは思えない見事な肢体と、相変わらずの童顔で、見る者を惹きつけてやまない。彼女は悪女ではないが、自分をミューズとして崇める無敵の巨漢マーブ(ミッキー・ローク)を騙して、自分の敵討ちを手伝わせる。


つまり、この映画で一貫しているのは、女は怖い、女は騙す、という僕たちが知りたくない真実だ。そして、同時に騙されてもいいと思わせてしまうほど、いいオンナは存在する、ということだ。なんど痛い目にあっても、今度の愛のセリフは本心からなのかもしれないと、うっかり信じかけてしまう。強い男たちが、コロリとやられる、そういうオンナを描いた映画。そう思えばなかなかに核心を突いているな、と感心する。そういう映画なのだ、この『シン・シティ 復讐の女神』は。

魔性の美貌で男を狂わせる悪女を演じるのはエヴァ・グリーン

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エヴァに騙され続けても惹かれてしまう、探偵のドワイト

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場末のダンサーを演じるジェシカ・アルバ。愛するハガーソン(ブルース・ウィルス)を死に追いやった街のボスへの復讐を誓う

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最強の野獣マーブを演じるのはミッキー・ローク

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街のボスの庶子であり、彼に勝負を挑むギャンブラーはジョセフ・ゴードン=レヴィット。愛するオンナを奪われて、死地に赴いてしまう

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シン・シティ 復讐の女神 予告

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