YAMAHAさんからお借りしているトリシティ。

梅雨の季節でなかなか乗ることができずにいたが、ようやく短い時間ながら、二度目の試乗を行うことができた。

トリシティは言うまでもなく、前二輪、後一輪という変則的な形態をしているスクーターだ。
走ってみて特徴と言えるのは、体重移動によって曲がる、というよりも、ハンドルを使って前輪に作用してあげることで、前輪からバイク自身が勝手に傾き始めて曲がってくれる、という印象だ。

あらためてスペックを見てみると、

車両重量 152kg〈156kg〉
水冷・4ストローク・SOHC・2バルブ
単気筒
総排気量 124cm3
最高出力 8.1kW(11PS)/9,000r/min
最大トルク 10N・m(1.0kgf・m)/5,500r/min

となる。一般的な125ccクラスのスクーターのスペックと変わらない。

特筆すべきは二人乗りのしやすさ

普段乗っているバイクが古いとはいえ大型二輪(750cc)であることから、その非力さに対して最初に不満に思うのだが、車体が軽いということと、ちょっとした坂道や直線で気軽に全開にできる(もちろん法定速度内で収めていますw)ことで、パワーで乗るバイクではなく軽さとしなやかさで乗るバイクであるという認識が生まれ、徐々にその楽しさがわかってくる。

また、トリシティの左ブレーキは後輪だけでなく前輪に対しても制動する前後連動型のブレーキであり、これも最初は慣れないものの(うっかり右の前輪ブレーキを頼りに制動しようとする)、その動きを理解するにつれ、便利さがわかる。信号での停止などでは、左ブレーキだけで十分停まるし、少しぐらい強く握っても挙動は乱れないからだ。
逆に右ブレーキは積極的に前輪に加重をしたいときだけ使う、と徹底すれば、このバイクなりの速いコーナリングが可能になってくる。ただし、先に述べたように、トリシティは車体が自分から倒れ込んでいくような感覚をライダーに与えるので、どこまで自分から倒し込んでいいか、限界点が掴みづらく、あまり積極的に攻めていくと突然破綻するような怖さがある。

もともとスポーツバイクではないし、日常の速度域で安全にオートバイを操る感覚を楽しむ、という目的を忘れなければ、トリシティはまさしく”ちょうどいい”オートバイであると思う。

特に、女性ライダーには原付よりは速くて便利で、安全に街中を移動できるし、二人乗りをしても後ろに乗る人の重みをあまり感じないので、トリシティはオススメだろう。

そう、トリシティは非力であるが、なぜか二人乗りが合う。
タンデムをしても窮屈さや重さを感じない。むしろ、後輪にいい感じに荷重がかかって、走りやすさを感じるくらいだったのは意外なポイント。

女性ライダー、そして二人乗りに向いているバイク

スクーターをあらためて買うか?と問われれば僕は買わない(w)のだが、スクーターを日常の足として考える人であれば、トリシティはよい選択の一つだ。

穏やかな挙動と、十分すぎるほどのブレーキ、ちょっとしたコーナーでも”リーン”を楽しめる味付け。250cc以上のビッグスクーターでは大きすぎる、原付は走行上の制限がありすぎる。そのちょうど間の、気軽なコミューターとしてなら、トリシティは積極的に選んでよいバイクである。