練習走行のある22日(金)、コメンタリー用の取材として走行準備に勤しむピットの人たちにインタビューをしました。すると、イギリスからカワサキKR500とカジバC589を持ってきたクリスさんのピットに、「むむむっ?」と思う人物がいました。

モノコックフレームが特徴的な1981年型カワサキKR500の後ろで、スマホをいじっているのがチャス・モーティマーさんです。

鈴鹿入りした金曜日のその時点で、私はまだライダーのエントリーリストの完全版を手にしていなかったのですが、彼のヘルメットに記された名前「CHAS」を見てピンときました。この方は1960〜1970年代に世界ロードレースGPで活躍された人物、チャス・モーティマーさんです。

チャスさんのプロフィール。

ここ鈴鹿に集った2輪ファンのお目当はケビンやエディやケニーなのでしょうが、私はチャスさんを発見して「うぉー!」とひとりコーフンしてしまいました。普段自分の遊びで、ヒストリックロードレース用に乗っているマンクス・ノートンやグリーブス・シルバーストーンに、チャスさんは非常に縁の深い人物なのです・・・。

1973年のGP、ヤマハ2気筒に乗るチャスさん。この年の125ccクラスではランキング2位。チャスさんが最もタイトルに近づいた年でした。

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バリー・シーンとスタート前に談笑するチャスさん。

www.carlosghys.be

2009年の欧州のヒストリックイベントにて、ヤマハファクトリーの水冷250ccツインにまたがるチャスさん。

www.rodcoleman.be

父とフランシス・バート(伝説的なマンクスノートンチューナーのひとり)が経営するレーシングスクールのインストラクターとして働きながら、チャスさんは1965年からロードレースへ参戦(グリーブス・シルバーストーン)。1969年からはヴィラとヤマハに乗り世界ロードレースGPへ参戦開始。107戦で通算7勝。そのうちの4勝は世界GPステータスがかかっていた時代のマン島TTでした。

マン島TT自体は通算で8勝。1976年にはマカオGPでも優勝。そしてチャスさんのキャリアでユニークなのは、世界GP含むFIMの世界選手権の125cc、250cc、350cc、500cc、そして750ccの各クラスで、彼は優勝を経験しています。この稀有な記録を達成したのは、後にも先にも彼が唯一無二なのです。

また日本に来てくれるかな? いいとも〜?

1981年型カワサキKR500にまたがるのは、オーナーのクリス・ウィルソンさん。この1981年型は塗装を含めてオールオリジナルという貴重な個体です。右はメカニックとして随行したナイジェル・エベレットさん。モノコックの初代ホンダNR500(0X)のメカニックとして「当時鈴鹿に5ヶ月くらい滞在していたこともあるよ」とおっしゃってました。

最終日の最終走行では、チャスさんはラッキーストライク・スズキに乗車しました。左のメガネの人物が、2台のスズキRGVΓ500のオーナーであるスティーブ・ウィートマンさん。スズキのグランプリバイク・コレクターとして著名な方です。

燃料タンクにランディ・マモラのサインが記された1989年型カジバC589。カジバの世界GP500ccクラス挑戦は、ヤマハYZR500のような並列4気筒からスタート。C10からはV4エンジンを採用。このC589からは、C=カジバ、5=500ccクラス用、89=年式のネーミングを用いるようになります。

オーナーのクリスさん、ライダーのチャスさん、そしてメカニックのナイジェルさんとは、金曜日と土曜日に不調だったカジバC589のメンテナンスのために、「とあること」をお手伝いしたことから仲良くなりました。自分もヒストリックモーターサイクルレースを趣味にしていることを話すと、「じゃあ英国に来たら、ぜひ寄ってくれ!」「チャスとふたりで、グッドウッド・リバイバルにエントリーしたらどうだ?」などなど、とても嬉しいことをおっしゃってくださいました。

主催者は来年も、SUZUKA Sound of ENGINE を開催したいと考えているのですが、そのことをお伝えするとクリスさんは「来年ももちろん参加するよ!」と力強くこたえてくれました。来年度はどのようなファクトリーバイクを持ってきてくれるのでしょうか? 楽しみにしましょう!