ライカは同じドイツのポルシェに似ている。

いや、ポルシェだけではなく、BMWにも似ているし、メルセデスにも似ている。ドイツ人らしいクラフトマンシップというか、頑固で愚直に技術を突き詰めることによって生まれる、奇跡的なデザイン美や高いブランドロイヤルティが、どのメーカーにも通じるところがある。

例えばポルシェは911において、リアエンジン・リアドライブ(RR)という型式にこだわる。高速域においてまっすぐ走りづらくなるという欠点があるRRを、技術者の意地で貫き通し、時代とともに磨き上げる高い技術で911を世界トップクラスのスポーツカーの座に座らせ続けている。
BMWもまた、モーターサイクルであればボクサーツインにこだわり続け、自動車でもストレートシックス(直列6気筒)の伝統を頑なに守る。

もちろんポルシェでさえも911の形に似たケイマンや、RVを作って、商業的な色気は捨てていない。BMWもメルセデスもそうだ。

しかし、それでも一貫して思えるのは、見た目ありきのプロダクトではなく、やはりエンジンありきで車を作り、その中でも核となる技術に徹底的にこだわる頑固さがドイツ車を支えている。

同じように、ライカもまた、レンジファインダー(光学距離計)という、ある意味時代遅れなテクノロジーにしがみつく。いや、しがみつくだけではない。日本メーカーを主流としたオートフォーカスや手振れ補正といった最新技術に対して、古臭いテクノロジーを磨き上げて、別の価値を顧客に提案しつづけるのだ。

いまさらモノクロにこだわるわけは?

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ライカが5月に国内でも発売開始したライカMモノクローム(Typ246)は、そのライカのこだわりの一つの集大成だ。

ライカMモノクローム(Typ246)はモノクロ撮影専用のレンジファインダー式デジタルカメラなのである。
今の時代、白黒テレビを買う者はいない。まして作ろうとするメーカーもいまい。なのにライカは白黒写真しか撮影できないデジタルカメラをリリースした。しかも円高で割高になっているとはいえ、国内販売価格 税込113万4,000円だ。言葉を選ばずにいえば、正気の沙汰とは思えない。

確かに、モノクロにする、つまりカラーフィルターをそぎ落としたことで、色を処理する必要がなくなったので、その分余ったリソースを写真の画質向上につぎ込むことができる。これはMake Senceではある。思い切った引き算によって、カメラの性能を画質に集中させるのはある意味正しい。

有効2400万画素の新開発モノクロ撮影専用フルサイズCMOSセンサーを搭載したライカMモノクローム(Typ246)は、ローパスフィルターを搭載しておらず、またカラーフィルターを取り外したことで輝度値の演算に必要な色補間処理が不要なため、色を認識する撮像素子を搭載したデジタルカメラよりもはるかにシャープな描写のモノクロ写真を撮影することができます。

美しい階調。

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実際、サンプルの写真のように、その画質の美しさは確かに息を飲むばかりだ。
僕も実はモノクロの写真が好きで、よく撮る。特に男性のポートレートは、モノクロのほうが格段にかっこいい

だが、それでもこれまでの一眼レフや高級コンデジで写真を撮り、そのあとからモノクロに変換はできるし、最初から白黒写真モードで撮影だってできる。
敢えてモノクローム専用カメラを買う、というのはそうとうこだわりがないとできないだろう。

白と黒の間に、数え切れない無数の”色”が存在する。

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わかる人にしかわかればいい、という傲慢なまでのプライドがブランドを作る

ただ、例えば今年世界最速を競うことになるだろうスーパーバイク、Kawasaki Ninja H2やYAMAHA YZF-R1/R1Mあたりは300万円クラスだ。「時速300キロ」「世界最速」を買うのに、車であれば3000万円は必要だが、バイクならその10分の1で買える。
僕たちならその価値を相応に思うが、速い車に興味がない人なら、それもまたバカじゃないかと思うだろう。
軽自動車しか買う気がない、という人には、ユーティリティとしてはほとんど変わりがない(エンジンがあってタイヤが4つ)フェラーリに数千万円かける人の気持ちはわからないし、オートバイも移動手段としてある程度なんでもいいと思えば、維持費の安い250cc未満のビッグスクーターあたりが良い選択だろう。

要は、その価値がわかる、その価値を欲する人だけに届けばいい、という商品は世の中にいくらでもあるのだ。

潔くカラーを捨て、モノクロームの世界を、一瞬でその手の中に切り取る。それだけの機能に100万円を払うかどうか。それを高いと思わない、上質なモノクロームの写真を撮影し、アートとして高める技量とセンスを持つクリエイター。彼らの為に作られた特別な道具。それがMモノクローム Type246だ。

正直言って僕は買わない。買わないが、それこそお金が余っているのなら100万円の軽自動車を買うよりは間違いなくこっちを選ぶくらいに、実は価値を認めてしまっている。