友人の、30代前半の女性の話である。

彼女は輸出企業のマーケティング担当として働いており、海外出張はざらにある。
そして、都度、日本人駐在員への土産物を持参する気配りの持ち主なのだが、あるとき現地のパーティーで知り合った駐在員妻に、あるものを買ってきてくれと頼まれた。

女性版のTENGA

それは、iroha(イロハ)というアダルトグッズだった。発売元の表現を借りれば「女性のためのセルフ・プレジャーアイテム」。一種の自慰用のローターらしい。

駐在員妻によれば夫との関係が最近ご無沙汰らしい。現地人との間のアバンチュールを楽しむご夫人たちも多いらしいが、彼女は気が乗らない。さりとて、女性としてのメンテナンスはしておきたい。
そこで、irohaが欲しい、ということになったそうだ。ちなみに、irohaの発売に先立って、男性用のアダルトグッズとして先行して発売されて大成功を収めたのが TENGA だ。

iroha-tenga.com

iroha-tenga.com

商品のコンセプトとしては実際のマスターベーション時の快感を追求しており、従来よく見られた女性器の模倣と言ったデザインは採用されていない。発売当初のキャッチコピーは「オナニーの未来が、やってきた」とし、包み隠さない、卑猥でない、後ろめたくない、明るく堂々としたオナニーを押し出した。
性具としては珍しくテレビ番組等の報道媒体にも取り上げられている。ビジネス誌のフォーブスにも紹介された。2007年に海外での販売が開始され、2013年現在、アメリカ、イギリス、スペイン、中国、タイ、台湾、シンガポールなど40カ国以上にて販売されている。2013年1月現在で、累積2500万個が販売された。

包み隠さず、いろはを楽しめるか

友人の女性は、頼まれればなかなか嫌と言えない性分だったが、さすがにアダルトグッズを自分で買うのは気が引けたらしい。駐在員妻にそれとなく断ろうとしたのだが、日本国内であればどんな方法でも買えるだろうが、実際欲求不満の辛さは理解できないわけでもない。
それに、自分が断った結果、彼女が欲望を外の男に向けて、それが原因で駐在員の離婚騒動にでもなったら、実に困る仕事熱心な彼女はついに折れ、irohaを次の出張時に買っていくことを約束したのだ。

いざ買おう、と決意してみると、それは案外簡単であることはすぐわかった。
TENGAのコンセプトである、”包み隠さない、卑猥でない、後ろめたくない、明るく堂々”とまで割り切れはしないものの、買おうと思えば空港のお土産コーナーやドラッグストアにも置いてある。旅の恥はかきすてというが、サクッと買って、あとは飛行機に乗ってしまえばいいじゃないか。機内で自分が使うわけでもあるまいし・・と彼女はふと考え、ひとりで頬を赤くしたとのことだ。

さて。実際に、友人であるその女性は、次の出張でスーツケースに3種類のirohaを隠し、渡航したという。
無事にirohaを渡し、帰国してから3-4日経ったのが今、だ。

いまでは彼女は、irohaを手に入れた駐在員妻からの事後報告を楽しみに待っているらしい。
その報告結果次第では、自分でもirohaを買ってみよう、そう計画しているとのこと。

銀座のとあるバーでその話を聞いている私は「別に高いものでもないんだから、すぐ買ってみればいいじゃないか」と彼女に言った。すると彼女は「馬鹿ね。そういう道具を買うにも、女にも女の言い訳が必要でしょ。勧められたから買ってみたってことにしときたいでしょ」と笑った。

付き合ってもいない男に、ぶっちゃけ話をしたうえでのその恥じらいというか、エクスキューズはよくわからないが、とりあえず私も、駐在員妻の、そして友人である彼女の報告を少し楽しみに待つことになったのである。