1980年代の日本はまさに空前のバイクブームで、国内4メーカーから競うようにして様々なモデルが発売され日本製バイクの黄金期といってもいいのではないでしょうか。その中でも各社が力を入れた当時のフラッグシップモデルを振り返ってみましょう。
出典:http://www.motorcyclespecs.co.za/model/Honda/honda_cb900f%2079.htm
Honda CB900F
ホンダのフラッグシップは「CB900F」です。これは1969年にホンダが世界をアッと言わせた空冷4気筒の「CB750 Four」の後継機種として開発されたマシンです。当時、CB750 Fourの後を追うようにして発売されDOHC 4バルブエンジンを搭載した、新しい世代の北米向けKawasaki Z1(1000cc)と国内向けZ2(750cc)に性能面で劣ってしまったホンダが、その王座を奪還すべく、FIMヨーロッパ耐久選手権へ参戦していたRCB1000のノウハウを投入し、これまでのコンサバティブなバイクのイメージを払拭した意欲的なデザインで投入し、瞬く間に人気モデルとして復活を遂げました。国内では同じデザインでCB750Fとして大人気車種となったのです。
出典:http://www.motorcyclespecs.co.za/model/kawasaki/kawasaki_z1000j%2081.htm
Kawasaki Z1000J
北米のビッグバイク市場でホンダを追撃してきたカワサキは、大ヒットしたZ1から、当時流行していたカフェレーサーを意識したZ1-R、デザインを一新したZ1000 MKIIとモデルチェンジを繰り返してきましたが、1980年に大幅にモデルチェンジした「Z1000J」を投入。このモデルはアメリカのプロダクションレースであるAMAスーパーバイクレースのベース車両として、かのエディ・ローソンが駆り1981年にスーパーバイクでタイトルを獲得し、その記念モデルとして発売された「Z1000R ローソンレプリカ」はいまでもプレミアム価格で取引される人気モデルとなっています。
出典:http://www.motorcyclespecs.co.za/model/suzu/suzuki_gs1000s%2079.htm
SUZUKI GS1000S
この頃、スズキも負けていませんでした。Kawasaki Z1の成功を研究したスズキも自社初となる4ストロークDOHCエンジンを開発し1977年に発表したGS750を1000ccとしたGS1000を発売。このマシンをベースとして、かの有名なPOPヨシムラがエンジンチューンを担当して出場したAMAスーパーバイク選手権では1979年と1980年にタイトルをとり、ヨシムラとともに世界に名声をあげることになります。その後、このマシンはFIM世界耐久選手権でも大活躍する名車として歴史に刻まれることになるのです。同時代にAMAで活躍したフレディ・スペンサーのCB900Fとエディ・ローソンのZ1000Rの人気に較べて、日本ではあまり認知されていないように感じるのはちょっと残念ですね。
出典:http://www.vintagemotorcyclesonline.com/features/stories/217-yamaha-xs-eleven
YAMAHA XS1100S
一方、ヤマハはこの3メーカーとは全く違うストーリーを刻んでいました。それまでスズキと同様に2ストロークエンジンを得意としていたヤマハは、1969年にトライアンフのバーチカルツインエンジンを意識した「XS-1」を発売していましたが、1978年にDOHC4ストローク4気筒エンジンのXS1100を発表。国内4メーカーによるビッグマルチスポーツの時代が到来するかと思われましたが、ヤマハのビッグマルチはレーシーではないシャフトドライブが採用され、北米仕様となったアメリカンタイプの「ミッドナイト・スペシャル」は当時の日本でのアメリカンチョッパーブームで憧れの存在となったのでした。
バイク漫画の金字塔となった「ケンタウロスの伝説」でもこのミッドナイトスペシャルが登場してボクも憧れたものです。このXS1100の系譜はその後、FJ1100からXJR1300へと受け継がれ傑作・空冷スポーツバイクとして長く続いてゆきます。
いかがだったでしょうか。現代のネイキッド・スポーツの源流となる1980年の国産4メーカーのフラッグシップ。これ以外にもKawasaki KZ1300やCB1100Rなどユニークなモデルは1980年代にたくさんありますが、またの機会に紹介してゆきたいと思います。