サハラ砂漠を縦断するために誕生したアドベンチャー系
昔はビッグタンクとかビッグオフローダーなどと言われてオフロードバイクの範疇だったアドベンチャー系バイクが世界的に人気だ。そもそも1978年から始まったパリダカールラリーに出場するために、各メーカーや出場者がサハラ砂漠を縦断する必要性から作り上げられた、一般的なバイクに較べてだいぶ特異なスタイルだったと思うが、まさに究極のアドベンチャーラリーであったパリダカールラリーが人気を博したことから、国内外のメーカーもパリダカ競技車のデザインを取り入れた市販車をリリース。ホンダからは1987年に「トランザルプ」が、1988年にはBMWから「R100GS パリダカール」が相次いで発売されたのがその始まりだった。その後、このタイプはアドベンチャー系として進化してゆき「BMW R1200GS」の人気がいまの世界的なブームを牽引している。
ツーリングに最適なスタイルはロードバイクへ進化してゆく
このアドベンチャー系は多くのライダーにとってはオフロードバイクというより、大きな車体がうむ安定感とバランスのとれた走行性能、なにより通常のバイクより大きな燃料タンクが装備されることが多かったため、航続距離の長いツーリングバイクとして受け入れられていく。この頃からアドベンチャー系は「アルプスローダー」とも呼ばれるようになりツーリングバイクの1ジャンルとして定番化していった。また、タイヤもそれまでオフロード用のブロックタイヤが一般的だったのが、標準でオンロードタイヤが採用されることが主流になりオフロードタイプから、オンロードバイクへと変化してゆくことになる。
2015年はアドベンチャー系の勢力図が変わる
その進化はパリダカの頃を知る私にはすでに想像の域をはるかに超えているようだ。DUCATIは「ムルティストラーダ」を2003年から投入していて比較的早くアドベンチャー・モデルをリリースしていたが、やはり同社のイメージ通りビッグオフローダーというより、デュアルパーパスなデザインのロードバイクといった印象で、ビッグオフローダーというイメージが強いBMW GSシリーズとは一線を画していた。このムルティストラーダの方向性はアドベンチャーの王者BMW GSシリーズの君臨により、どこか非主流のような印象を持っていたが、2015年はこの勢力図が変わってしまうかもしれない。
●DUCATI Multistrada 1200
排気量:水冷L型2気筒 1198.4cc
ボア×ストローク:106×67.9mm
圧縮比:12.5:1
最高出力:150hp / 7,500rpm
最大トルク:13.1kgm/7,500rpm
乾燥重量:209kg
●BMW S1000XR
排気量:水冷4気筒 999cc
ボア×ストローク:80×49.7mm
圧縮比:12.0:1
最高出力:160hp / 11,000rpm
最大トルク:112Nm/9,250rpm
乾燥重量:206kg
●MV AGUSTA STRADALE 800
排気量:水冷3気筒 798cc
最高出力:115hp / 11,000rpm
最大トルク:78.5Nm/9,000rpm
乾燥重量:181kg
峠では最速かもしれない「スーパーアドベンチャー」
2003年よりアドベンチャー系ながらスポーツバイクとしての牙を研ぎすませてきたムルティストラーダに追従するかのように、2014年11月に開催されたミラノショー(EICMA)でBMWとMV AGSTAからアドベンチャー系の新製品が発表されたのだ。この3台のスタイリングとその搭載されているエンジンはすでにアドベンチャー系というより新しいタイプのスーパースポーツと言ってもいいのではないだろうか。アップライトなポジションと、リアルに各社のスーパースポーツモデルから譲り受けたエンジンの組み合わせは、のんびりと景色を眺めながら走るツーリングバイクというカテゴリーには収まらないだろう。日本の多くの峠道では窮屈なポジションで路面を見つめながら走ることになるスーパースポーツよりはるかに速く駆け抜けることができるのでは。スーパースポーツ大好きな飛ばし屋のあなたも、このスーパーアドベンチャーには食指が動いたでしょっ!