すべてはここからはじまった・・・


「最新の911は最良の911」とは、ポルシェを代表するスポーツカーである911シリーズを語る際、クルマ業界でよく使われる言い回しです。このタイトルはそのパロディですが、実は私は、本当にそう思ったりもしています・・・。


出典:http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-7d-f7/trailsupercub90/folder/187896/71/9090871/


出典:http://www.honda.co.jp/motorcycle-graffiti/


世界で最も多く作られたモーターサイクルとして認知されているスーパーカブの初作は、1958年発売のスーパーカブC100でした。このOHV単気筒50ccという古典的メカニズムを持つC100が最良のスーパーカブ・・・と言われても、多くの方はキョトン・・・とされるに違いません。


半世紀以上前に生まれたC100は4.5psのエンジンを、後年のスーパーカブよりも軽量コンパクトな車体に搭載しています。そのためか、その走りと取り回しは非常に軽快です。


私はイヤガラセのような原付一種(50cc以下)への諸規制を回避するため、60ccにボアアップして原付二種登録したC100をかつて通勤に愛用していたのですが、混雑した混合交通の都内でもC100はスイスイと気持ち良く走り、交通の流れに遅れをとることはありませんでした(ちょっと頑張れば?)。


当時、今よりも貧しい20代の若者だった私にとって、C100は最高の乗り物でした。2ストローク単気筒並みに簡単にシリンダーヘッドとシリンダーが分解可能なので、メンテナンスやカスタマイズがラクチン。どんなにハイペースで走っても50km/1リットルを切らない高燃費。そしていつオイル交換したか忘れてしまうくらい(苦笑)、タフネスで壊れないエンジン・・・。


これらは後年のスーパーカブシリーズにも通じることですが、初作のC100からスーパーカブは完成の域に達していたのではないか・・・と錯覚することもしばしばでした。これはあくまで錯覚としても、スタイリングに関しては初代のC100が一番好ましく思え、後年のものになるにつれデザインが悪くなっていったような印象を持っています(主観ですけどね)。

出典:http://vintagehonda.20m.com/images/


このような思い込みの一環ではありますが、C100が最高というゆえんに「ホンダの未来を切り拓いたモデル」という事実があります。1958年以来の国内での大ヒット、そして始まったばかりのホンダの輸出の戦略商品として外貨を獲得したC100は、ホンダに「次の道」へ進むための原動力となる多大な資金をもたらしました。


もしスーパーカブC100がなかったら、マン島TT含む世界ロードレースGPでの活躍、4輪製造業への進出、そして4輪F1への挑戦・・・といった1960年代以降のホンダの栄光はおとずれなかった・・・ことはないにしても、ずっと発展の歩みは遅くなったに違いありません。


ちなみに1960年、東洋初の近代化設備の大規模自動車工場として当時の経済界をわかせた鈴鹿製作所は、当初スーパーカブの専用工場でもありました。スーパーカブを大量生産するための技術ノウハウは、後年多くのホンダ製品造りに活かされたことは多くの書物が伝えるとおりです。


最古のスーパーカブが最良のスーパーカブ・・・とは大げさで多分に主観を交えたフレーズではありますが、私たちはC100に乗るとき、「ホンダの未来を切り拓いた」作品に乗っているんだ、という誇らしい気持ちも味わうことができます。この特典は、C100系OHVスーパーカブオーナーのみの特権でしょうか(笑)。

出典:http://dailykanban.com/wp-content/uploads/

出典:http://upload.wikimedia.org/wikipedia/en/2/2e/You_meet_the_nicest_


出典:http://vroum52.com/vroummotosupercub.img/you-meet-a-nicest-people-with-your-Honda-cub-1960-


最後に、海外市場向けのスーパーカブの広告を紹介します。日本では実用性をアピールする広告が主でしたが、海外ではモーターサイクル=暴走族という世間のイメージを覆す意図で、楽しげにスーパーカブに二人乗りする、健康な男女が描かれた広告が多用されました。この「幸せそう」なイメージを、今日のモーターサイクルの広告でももっと活用してもいいのでは・・・と個人的には思います。