『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)にて1975年〜1985年の完結まで、多くの読者からの支持を集め、10年に渡り長期連載された『 750ライダー 』。
少年漫画としても、バイク漫画としても歴史に名を残した大ヒット長編バイク漫画がどのように生まれたのか・・・。この連載ではモーターマガジン社から出版されている「750ライダーファンブック」の記述を元に750ライダーの誕生までの経緯から、制作現場の裏事情をご紹介していきます。(akiko koda@ロレンス編集部)

前回までの記事はこちら
Vol.1石井いさみさんが“超売れっ子!”になるまで >
Vol.2石井さんの青春を取り巻いたクルマとバイクたち、バイクの意識が変わったエピソード >
Vol.3『750ロック』誕生。そして『750ライダー』へのスピンアウト!>
Vol.4 長期連載作品であることの重責@750ライダーファンブック >

いつになっても長編漫画の結末って、作家にとっても読者にとっても大きな問題ですよね。確立された世界観だからこそ、期待を裏切らない結末にしなければなりませんし、読者側もこうだったらいいなとラストを想像してみたりしますよね。
石井いさみさんにもそんな思いがあり、結末に悩んでいました。そして、たどり着いたひとつの結末が、「例のテーマ」を組み込んだ案でした。

石井さんはこれを考えるにあたって『750ロック』に回帰しようとする自身の思考を抑え切れずにいた。甦るのは、バイクの楽しさの裏面には常に死というカードが貼りつけられているという、あのテーマだ。
そこで登場人物の中で、読者の投影でもあり、憎めないキャラクターとして人気を委員長と2分する順平に白羽の矢を立てる。

家庭が貧しいという設定で、大型のバイクに乗る免許を持たない彼が、憧れだったイタリア車のドゥカティを手に入れるというストーリーだ。

免許は?どうやって購入?などは伏せたまま、楽しげにドゥカティを駆る順平だったが、事故に巻き込まれ、帰らぬ人となってしまう。

突然のことに呆然とする順平のクラスメイトたち。ピットインに集まった光を始めとする登場人物たちは、そのとき目の前をドゥカティで疾走する順平を目撃する。

『750ライダー』は、 登場人物全員がこの集団幻想を見たというラストシーンで終わらせたい、という石井さんの意向は、少年チャンピオン編集部の同意を得られず、没となる。(文:船山 理)

採用はされなかったものの、これは石井さんの『750ロック』への執念として、記憶されていいエピソードではないでしょうか?

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