ラブコメの帝王の主演作
ヒュー・グラント主演の映画は久しぶりに観た。
困り顔に特徴があって、どんな役柄をやっても同じように見えるが、それはある意味スターの証明だと言えるだろう。
今回の役柄は、昔の栄光の記憶を忘れられないがゆえに、誰に対しても傲岸で無遠慮な男が、生活のためにいやいや引き受けた教師の仕事を通じて、徐々に態度を改め、自分自身の人生の脚本 を書き直して(リライトして)いく、というものだ。
正直キースは、とっつきやすい男ではない。ジョークにもトゲがあるし、落ちぶれてなおかつ業界人風情の振る舞いを捨てられない。女にもだらしないし、自分を好いてくれる女性に対してもいざとなると、仕事を失う不安から、意気地のない態度しか取れない。
しかし、一つだけいいところがある。誰かの才能を正しく判断し、しかもそれに対して妬むことをしないことだ。もちろんそれは、自分自身の才能を信じている元・天才だからとも言えるが、長くスランプにいると、普通なら他の才能に対して嫉妬を隠せなくなるものだと思う。
(実際、作中 素晴らしい脚本を書く学生に「嫉妬したよ」と伝える場面があるが、実によいシーンだ)
人間には”仕事”が必要だ。
マイルズは大学の講師の職に徐々に慣れてくる。そして、学生に脚本を教えるという楽しさを覚え始めると同時に、その行為が自分にとっての映画、そして脚本への情熱を呼び覚ますのである。
ヒュー・グラントはラブコメの帝王、と紹介した。本作でも大人びた女子学生との恋愛模様ももちろん描かれる。
しかし、それは本筋ではなく、自分の仕事を天職と思い、それに打ち込んでいた男が挫折を味わった挙句に、自分の人生をリセットして、新たな道を歩もうと決意するまでの話である。
仕事がないということは本当につらいことだ。それに、自分には才能があると信じているのに(しかも一度は大きな成功をつかんでいるのに)、結果的にそれを否定され続け、妻には去られ、息子にも冷たくされる、そんなつらく悲しいことはない。
しかしヒュー・グラントは軽やかにこの役を演じ、そして爽やかなエンディングを呈してくれる。
本作の邦題はリライフ、だが、現代はRewrite。その名の通り、人生の脚本はいつでも書き換えられる、その意思さえあれば。