VFXを扱わせては日本随一の名手 山崎貴監督による、不朽の名作コミック『寄生獣』の映画化。
前後編による映画の後編をようやく見ることができた。
前編のレビューはこちらから
前編同様ストーリーは基本的に原作に忠実
前編で寄生生物(パラサイト)に母親を殺害され、自身も深手を負わされたことで、彼らに敵愾心を持つようになった主人公 泉新一。
彼の心臓は、パラサイトの攻撃によって致命的な傷を負わされたのだが、彼の右手に寄生しているパラサイトのミギーによって修復された。そして、その修復作業によってミギーの細胞が体内で混ざり合うこととなり、新一の体に劇的な変化が起きる。人間ではありえない超人的な運動能力を発揮するようになるのである。
そこで、その力を利用して他のパラサイトたちへの復讐を決意する新一だが、逆にミギーが1日に数時間、意図せずに完全に睡眠状態に入ってしまうという、大きな弱点を背負うこととなり、思うようにはいかない。
さらに、自然破壊をし続ける人類に対して 母なる地球が送り込んだ”天敵”であり”治療薬”こそがパラサイトであると考え、パラサイト側に立つ人間が現れるなど、新一の周囲は思っていた以上の速度で変化していく。
そのうえに、一人の身体に5体ものパラサイトが寄生した超生物 後藤が登場し、新一たちの強大な脅威として立ちふさがるのである。
異なる種、異なる想いの間の蹉跌の行方
本作は、ストーリーとしては、人類対パラサイトの種の生き残りを賭けた戦いであり、パラサイトと人間のハイブリッド的な存在である新一とミギーの間にある相克や、新一自身の心の中の葛藤は、その象徴だ。
パラサイト側からの変化はある。新一の学校の教師として登場したパラサイト田宮良子は、他のパラサイトとのセックスを試みて妊娠し、出産する。その子供は普通の人間の子であり、田宮良子は今度はその子を育ててみるという実験をするのである。
抜群の知能を持つ田宮良子は、その過程で生殖能力を持たない自分たちパラサイトの存在意義を疑い始め、同時に子供に対する愛情に似た感情を持ち始めることに戸惑う。そして、人間との共存の可能性の模索へと、その知能を振り向け始めるのだ。
(田宮良子の存在こそが、本作のもうひとつの主人公であり、テーマの象徴である)
本作が提示する矛盾とは・・
本作では、超生物 後藤と新一の戦いがクライマックスではあるが、真に新一を追い詰めるのは実は人間そのものだった。パラサイトたちのほとんどは怒りや食欲、殺意などはあるものの、思いやりや愛などの感情はなかったはずだが、前述のように田宮良子には母性愛に似た意識が生まれている。
逆に、生来 人を愛し慈しむことができるはずの人間の側に、相手を簡単に殺害したり貶めたりする悪意ある者が現れる・・。その矛盾こそが恐怖であり、解決しがたい問題なのだ。