母親を廃人にした責任を背負うとともに、誰にも望まれずに生まれてきたという思いが、ヒョオの心に破滅願望を植え付けていました。彼は幾度となく、自ら死を引き寄るような行動をとるようになるのでした。
孤独な男女が引き寄せられ、無意識に支えあう
そんなヒョオの前に現れた一人の少女、響。
裕福な家庭に生まれながら、多忙な両親にはかまってもらうことなく、孤独な環境にいました。
恋人にも裏切られ、自殺を考えていた響は、自分以上に死を求めて街を徘徊する青年 ヒョオに出会うことで、彼に並々ならぬシンパシーを感じながら、盲目的に彼を愛するようになるのです。
一人で歩くこともできない自分はバイクと同じだ・・
自分自身で命を断つことはしないまでも、いつ死んでもおかしくない状況に好んで自らを置く、破滅願望に囚われたヒョオを、響は「あなたはバイクと同じ」と表現します。
ひとりでは歩くこともできず、誰かが乗っていなければコケてばかりでまともに走ることができない。バイクと同じだ、と。
この言葉は、ヒョオの胸に大きな波紋を残しました。生きていくうえで何に対しても興味を持てなかった彼は、このときオートバイに強い興味を持ちます。というより、オートバイに自分を重ねるようになるのです。
レーサーへの道を選ぶことで、生きることへのコミットをし始めるヒョオ
孤独なヒョオでしたが、響と出会ったことで、何かが変わり始めました。
周囲にも彼を気遣う仲間が現れ、ヒョオはレーシングライダーの道へと進むことを決意するのです。
とはいえ、彼の破滅願望は完全に消えることなく、また、ヒョオと響の接近をよく思わない人間の奸計によって、ヒョオは幾度となく死に瀕するのです。そのヒョオを支えつつも、彼の子供を身ごもったことを告げられずに思い悩む響。物語は暗いトーンのまま進んでいきます。
デビュー戦以来、好調な戦績を重ねるヒョオは、死を恐れないからこその速さ、というのもありますが、それでも仲間たちを大きく期待させるだけの才能の持ち主であると証明します。
しかし、彼は悪意ある人物によって薬物中毒にされ、大舞台のレースへの出場が危ぶまれるようになってしまいます。それでもレースが行われる筑波サーキットにボロボロの体で向かおうとするヒョオ。
そんな彼を助け、マシンとともにヒョオを筑波に運んだのは、行方不明だったはずの実の父親でした。そして、同時に記憶と正気を取り戻しつつあった母親や、ヒョオを心配する仲間たちもまた、筑波に集合するのです。
果たして彼はレースに参加できるのか。身重の体で重すぎるストレスに苦しむ響はどうなるのか?
この続きは、ぜひ本作をごらんください。