1977 -1979年に週刊少年サンデーに連載された、村上もとか先生のF1レース漫画の最高峰!。
天才レーサー日系英国人の赤馬研(ケン・アカバ)と妹の雪(ユキ)。
世界に数人しかいないボンベイ・ブラッドという血液型の持ち主ながら、命がけのF1レースに挑む兄妹の戦いを描いた、時代を先駆けた最高傑作です。
激闘編と愛憎編で、解説します!

日本のF1チームSVEの国産マシン SV01を駆り、世界の頂点を目指す天才レーサー、赤馬研(ケン・アカバ)。ボンベイ・ブラッドという特殊な血液型のために、わずかな事故でも命取りになりかねない危険を知りながら、過酷なレースに挑みます。
その彼を支えるのは、同じボンベイ・ブラッドを持つ妹の赤馬雪(ユキ)。4歳下の美しい妹はレースごとに輸血用の血液を病院で貯めていき、いざというときに備えるのです。その行為は血を分けた兄のため、というよりも、心の底から愛する男性に対する行為のようにも思えました。

「赤いペガサス」は、リアルなレース漫画であると同時に、子供には早すぎる、大人の秘めたる恋の物語なのです。

特殊な血を共有する二人は特殊な出会いをしたことで、兄妹であるという事実を受け入れがたい想いを抱えていた

そんな二人は、ケンが19歳、ユキが15歳まで互いの存在さえ知らずにそれぞれの人生を送っていました。だから、突然の”家族”の出現を前にしても、ボンベイ・ブラッドという特殊な血を共有しているのにもかかわらず、血のつながりを二人に意識させることは、あまりにも後づけであり難しいことでした。
二人は兄妹としての関係性を正しく構築する努力をしながらも、心のどこかで一目で恋に落ちてしまった事実を否定しきれず、複雑な想いを抱えたまま成長したのです。

画像: 異母兄妹として、互いの存在を知らずに育った二人。

異母兄妹として、互いの存在を知らずに育った二人。

最大のライバルが出現

歴戦のベテランたちを向こうに回し、テクニックの限りを尽くして戦うケンの前に、チームメートとしてSVEに加わった若き天才 ペペ・ラセール。
瞬く間にケンのテクニックを盗み、彼の最も身近で最も手強いライバルへと成長するのです。

画像: 最大のライバルが出現

しかも、そのペペはやがてケンの妹ユキに想いを寄せるようになり、ユキもまた、ケンとは異なる激しくストレートに感情を向けてくるペペに惹かれていきます。
ケンへの想いを断ち切るためにも、ぺぺの気持ちに応えることが正しい道であるとも思うのです。

画像: 激しくユキに迫るぺぺ。ユキも彼をはねのけることができない

激しくユキに迫るぺぺ。ユキも彼をはねのけることができない

画像: そんな二人を思いもかけず目撃してしまうケン。そっと背を向け立ち去ります。

そんな二人を思いもかけず目撃してしまうケン。そっと背を向け立ち去ります。

画像: 慟哭するケン。

慟哭するケン。

禁じられた恋心を封じる二人

やがて、ユキもまたぺぺに対して特別な感情を持っていることを理解したケンは、ユキにぺぺと暮らすことを勧めます。

ユキもまた、それが自分たち兄妹にとっても最善なのだと考え、家を出るのです。

画像: 禁じられた恋心を封じる二人

ケンは、ユキが帽子を忘れていることに気づき、後を追いかけますが、ユキに渡すことなくその背を見送ります。
去っていくユキを見送りながら、どうということはない、二人が出会う前の自分にもどるだけのことだ、そう言い聞かせるのです。

画像: どうってことはない。すべて元に戻るだけのことだ。自分に言い聞かせるようにつぶやくケン。あまりにも、あまりにも切ない、禁じられた恋の終わり・・・

どうってことはない。すべて元に戻るだけのことだ。自分に言い聞かせるようにつぶやくケン。あまりにも、あまりにも切ない、禁じられた恋の終わり・・・

ケンとユキを襲う新たな悲劇・・

ほどなくぺぺとユキは結婚します。

ケンはマリオ・アンドレッティとのポイント争いを続けると同時に、僚友である(かつ義理の弟となった)ぺぺとも激しい戦いを繰り広げます。

そんなライバルたちとの競争の中に、ケンの表情にはユキを失ったことへの未練や心の傷が浮かぶことはありません。誰よりもストイックに勝負に挑むのです。

ところが、そんな彼らを思いもかけない悲劇が襲います。
ぺぺが事故を起こして、非業の死を遂げるのです・・・・。

画像: 後続車と接触して宙を舞うぺぺのSV01。ヘルメットのあごひもが緩んでいたのか、ヘルメットが外れ飛ぶ。

後続車と接触して宙を舞うぺぺのSV01。ヘルメットのあごひもが緩んでいたのか、ヘルメットが外れ飛ぶ。

画像: 頭を強打したことで脳内出血を起こし、ぺぺはあっさりとこの世を去る

頭を強打したことで脳内出血を起こし、ぺぺはあっさりとこの世を去る

禁断の愛を超えたからこそ生まれた穏やかな関係へ

ぺぺの悲運を嘆く間も無く、レースは続いていきます。
ケンはぺぺの無念をも背負い、激しく勝負に挑み、そしてついにはF1グランプリの頂点に立ちます。F1初参加にして、初の年間チャンピオンの座をつかむのです。

そしてあえなく未亡人となったユキのカラダには、ぺぺとの忘れ形見が宿っていました。

画像1: 禁断の愛を超えたからこそ生まれた穏やかな関係へ

それを知ったケンは、ユキにこう告げます。
「3人で一緒に暮らそう」 と。

ケンの言葉にも、横顔にも迷いも悩みもありません。

画像2: 禁断の愛を超えたからこそ生まれた穏やかな関係へ

画像3: 禁断の愛を超えたからこそ生まれた穏やかな関係へ

もちろん許されざる恋を成就させるということではありません。
心の奥底の異性としての愛情はひそめたまま、家族として一緒に暮らしていこう、そういうことです。

二人は、いや やがて生まれ来るペペの血を引く子供と三人は、新たな生活へと向かっていきます。そこで物語は終わります。

リアルすぎるF1レースのガチなストーリーの裏側で、村上もとか先生は、あってはならない禁断の恋というきわどいサイドストーリーを用意し、この作品を大人の鑑賞にも耐える、上質のラブストーリーへと仕上げています。

F1サーカスという特殊な環境。ボンベイ・ブラッドという特殊な血筋。異母兄妹の秘められた恋慕という特殊な関係。これらがミックスされて、「赤いペガサス」は、読む者の心を掴んで離さない、特殊な作品となったのです。

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