ハーレーの113年の歴史はカスタムリーダーとしての歴史であり、オートバイをただの金属の塊ではなく、人生そのものの象徴へと昇華させてきたのは、ほかならぬハーレーダビッドソンである。
そのハーレーダビッドソンのダークカスタムの2016年の主力プロダクトが、2015年9月9日、港区湾岸でベールを脱いだ!
メーカーカスタムと言えるシリーズを提案する DARK CUSTOM
DARK CUSTOM(ダークカスタム)とは、2008年にスタートした、ハーレーダビッドソンの意欲時な取り組みである。どう意欲的かというと、もともとオーナーの89%がなにかしらのカスタムを施しているというハーレーにあって、メーカー自らカスタム前提で、比較的廉価で入手しやすいモデルを提供していることだ。
具体的にいうと、カフェスタイルのSTREET®500/750、ごつくファットなFORTY-EIGHT®、メーカー純正ボバーと言っていいIRON 883™の3車種が、カスタムベース車としてリリースされている。BMWで言えば、R nineT、に対するアプローチに近いだろう。
BMWとちがって、これまでのところは、ハーレー自体がカスタムハーレーを直接取り上げて、PRに使っていく、という感じではなかった。BMWが積極的にカスタムビルダーを取り込んで、作り上げたカスタムバイクを半ばメーカー公認のように紹介していくスタイルと比べると、いささか大人しい。
僕が思うに、バイクメーカーとカスタムビルダーの関係性は、ソフトウェアメーカーとデベロッパーとの関係に近くなっている。ITの世界でも、ハードウェアメーカーは、自社プロダクトのカスタムパーツを作るようなサードパーティーを厚遇することは稀であったかもしれないが、ソフトウェアメーカーであれば、自社ソフトをベースに新たなAPI(ソフトウェア同士の相互接続用プログラム)やアドオンソフトの開発をしてくれるデベロッパーは非常に重要な存在だ。そしていま、ハードウェアもまた、ソフトウェアによって動作をコントロールされる時代だけに、同じくデベロッパーをどれだけ囲い込めるかが重要な事業戦略になってきた。
同じく、オートバイにおいても、ライフスタイルに合わせて、自分だけのオートクチュールを作りたいというファンの声に応えていくことが、結果的に自社製品を売るためのブランディングになると、多くのメーカーが気づき始めているのではないか。
その意味で、カスタムバイクシーンの”前”王者となってしまったの感?があるハーレーだが、ここにきて、”現”王者のBMWに対して、ようやく反撃する気になったようだ。ファンとすれば、実に面白い状況になってきたと言えるだろう。
パーティー会場で待っていたのは、あまりに美しいカスタムハーレーたち
さて、今回発表されたダークカスタムの新作をお見せする前に、この稿では、多くのプレスをもてなすために、ハーレーダビッドソンが一生懸命用意してくださった、楽しいパーティー模様をまず紹介しよう。
2015年9月9日、台風で避難勧告が出るほど荒れた天候の港区で(笑)、2016年の最新モデルのローンチパーティとして、DARK CUSTOM PARTY in TOKYOが開催され、多くのプレス関係者が集結した。受付をすぎると、パーティー会場に入る前に、5台のカスタムハーレーが我々を迎えてくれた。
この5台は、DARK CUSTOMの派生的な流れとも言える、 STREET BUILD OFF 2015 (ハーレーをメインとするカスタムビルダーによるカスタムコンペティション)の最終選考車である 。どれをみても溜息をつくくらい美しいが、今回の展示では、優劣を決める必要がないので、我々は悩ましい問いに煩わされることなく、ただ眼福を得ることに集中できたのだ。
(編集部注) STREET BUILD OFF 2015 は、ここに飾られた5台ではなく、この5台を制作石した5組の著名カスタムビルダーによる、STREET 750のカスタムアートを競うプロジェクトであるとのこと。ここに加筆の上訂正します。また、ハーレーのディーラーたちによる カスタムコンペティション THE BATTLE OF THE KINGS が同時に行われ、これらを総称として、「STREET™750 CUUSTOM PROJECT」と呼んでいる。
会場はブラックライトとDJによるクールなサウンドで飾られた華やかな空間
うっとりするくらい美しいハーレーカスタムの間を抜けると、華やかなパーティー会場が用意されていた。
ハーレーらしさを健康的に味わうアトラクションも用意
酒と軽食を楽しみながら、ハーレーダビッドソンらしさが溢れる空気感を味わう。
アトラクションも、ハーレーぽさを全開にしながらも、背徳感やリスキーな感じは全くなく、どこか健康的にアレンジされている。
ハーレーダビッドソンといえば、アウトロー、ヘルズエンジェルズ、のようなイメージは遥か昔。イージーライダーでさえ、今のハーレーには似つかわしくないのかもしれない。
危険な香りは残しつつ、現代の若者に受け入れられる、爽やかさを漂わせる。ダークカスタムプロジェクトは、そういう難解な挑戦の結晶である。
その挑戦が成就するかどうかはおいて、少なくとも参加者たちは無邪気に楽しみ、ハーレー側が提供してくれた空気を受け入れていたように僕は思う。