ロレンスは、モーターサイクルとスポーツカーを中心としたメディアである。

世界各国のモーターサイクル関連情報を漁っているなかで気がついたのだが、モーターサイクルのカスタムを手がける企業は、いまや恐ろしいほどのスピードでITを使いこなしはじめている。

メーカーではなく、あくまでオートバイのカスタムを請け負う企業である彼らは、もともとは町のバイク屋であり、パーツ屋であり、修理屋である。
昔と違い、コンピュータ制御されているオートバイは、エンジンなどの性能向上はもはやメーカー以外にはお手上げになりつつあり、古いバイクの改造あるいは外装のカスタマイズしかできなくなっている。それが故に、デザインを追及せざるを得なくなった彼らは、CGを使いこなすようになった。

すると彼らの多くはバイクだけでなく、サーフボードをデザインしたり、アパレルのデザインにまでも手がけるようになる。そんな彼らからすれば、Webサイト制作くらい朝飯前ということになり、クールなデザインの自社サイトと、製品を販売するためのECサイトをもつようになった。

これらの動きは、実はアパレルやジュエリー、時計などの世界でも同じだ。デザインやファッションなどこれまでもっともITと縁遠かった世界が、急速にハイテク化している。

例として以下のWebサイトを見てほしい。FacebookやInstagramと組み合わせたWebサイト制作はレベルが高く、かつレスポンシブWebデザインで、画像も効果的に使い、ソーシャルにうまくつなげている。彼らはある意味街のバイク屋さん、である。

MrMartini

ruamachines

Hageman - Classic Motorcycle Engineering

66 Motorcycles

また、音楽がITとリンクして、SXSW(サウスバイサウスウェスト)のような有名なイベントをつくり、クロスカルチャーをつくり上げているのと同じように、モーターサイクルがほかのカルチャーを引き込みながら、やはりクロスカルチャー的なイベントを開催するようになった。たとえばここ数年毎年行われるようになったWheels & Waves(http://www.wheels-and-waves.com)は、モーターサイクルとサーフィンを融合するイベントだが、イベントの形やあり方はSXSWそっくりだ。

思うに、インターネットが完全にクラウド化し、利用するために必要なことが、知識や金からセンスや発想に変質したことが大きい。そしてつくり上げたコンテンツを拡散するための母体としてソーシャルネットワークが行き渡り、消費者と24時間結びつける接点としてモバイルが普及しきったことが、デザインコンシャスな企業たちがインターネットを最適な形で活用するための道をつくったといえる。

ある意味、さまざまな産業におけるコアテクノロジーが急激に高度化し、開発メーカー以外にはアンタッチャブルになったこと(車やバイクのエンジン、時計のムーブメントなど)が、かえってそれらをかたどるためのデザインを手がける産業をコンピュータライズさせた。それによって、バイクのカスタムを手がける会社も、服飾デザインを行う企業も、同じような構造に変え、同じようにインターネットを活用するような戦略をとりやすくさせた。

グラフィックデザインを行うデザイナーたちがカスタムバイクのデザインを行い、バイクカスタムを行う企業がアパレルを手がける。制作するプロダクトやサービスを展開するのはソーシャルメディアで、販売はECだ。まったく同じ戦略を異なる企業たちが同時に行うようになった。共通することは、彼らがデザインコンシャスな会社である、ということなのである。

このクロスオーバーはトレンドは、今後ますます多様な業界に広がるものと僕は考えている。コアテクノロジーを扱うエンジニアリング企業と、デザインをつくるデザインコンシャスな企業。どちらに舵をとるかが、今後の新興企業の最初の戦略的決断になると思う。

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