今年の5月にいわゆる裏原宿といわれるエリアにオープンした「Ducati Scrambler 原宿」。2014年9月のIntermot(ドイツ・ケルン)で発表されて以来、注目をあびてきたDucati Scramblerのコンセプトである、Self-Expression(「らしさ」の表現)という世界観を表現する、ドゥカティ スクランブラーのコンセプトストアだ。
店内はDucati Scramblerを中心にして、様々なファッションアイテムが陳列され、原宿という立地もあいまり、ここがバイクメーカーが運営しているお店であるとは、一見してもわからないだろう。これまでもドゥカティは独自にアパレルラインを展開してきたが、レーシングイメージの強い「赤いドゥカティ」に対して、「黄色いスクランブラー」はよりオープンで自由なバイクライフを体験してほしいという思いからか、カジュアルなアイテムが中心となっている。
このスクランブラー・コンセプトストアは、世界のカスタムバイクシーンをリードしている、オーストラリア発のアパレルブランド「デウス・エクス・マキナ」の、東京におけるヘッドショップのはす向かいに位置している。これはけっして偶然ではないだろう。ラフォーレ原宿や竹下通りに象徴される、ティーンファッションの発信地である原宿は、一方で昔からカウンターカルチャーを生み出してきた、カッコいいオトナの街でもあったのだから。
10代の頃から原宿が活動の中心だった私にとって、裏原宿といわれるこの界隈は思い入れのあるエリアだ。大昔からロックンロール文化をはじめ、エッジの効いたファッションカルチャーの発信地であった原宿は、しだいにティーンファッションを中心としたコドモの街となってゆくが、私が20歳代だった頃のこのあたりは、当時まだ珍しかったエスニックカレーレストランの「ギー」や、レゲエバーの「AKA」、クラブのはしりとも言える「ピテカントロプス」が軒を連ねて、そこにはビンテージのハーレーやトライアンフ、シングルエンジンのドゥカティやMVアグスタに乗る、カルチャーの最先端を体現する「オトナの若者たち」が集まるエリアだったのだ。
その裏原宿に、いま世界のカスタムバイクカルチャーの最先端をゆく、デウスとドゥカティ スクランブラーが、軒を連ねているというのは感慨深いものがある。このエリアから発信されようとしている、時代を経てオトナのカルチャーへと成長した「バイクのあるライフスタイル」はまさにロレンスが伝えたいコンテンツに他ならないからだ。ドゥカティが世界で初めてオープンした、コンセプトストア「Ducati Scrambler 原宿」はそうした時代の気分を表現する、もっとも新しい場所なのではないだろうか。
「Ducati Scrambler 原宿」で出迎えてくださった素敵な中村さん。この春からのコレクションはイタリア本国のものと同様とのことだが、秋からは日本の有名ブランドとコラボレーションした、日本独自のコレクションも発表してゆく計画だという。ライダーとして乗るマシンだけではなく「私の生き方のスタイル」を表現する、ファッションも楽しめるスクランブラーの提案を、このストリートバイカーの聖地であった原宿で体験してみてはいかがだろうか。